2008-11-09
■ [筆記][児童文学][サトクリフ]過去は、とりもどせるか~~ローズマリ・サトクリフ『ともしびをかかげて』(下)岩波少年文庫 
この結末は…
つらすぎる。

- 作者: ローズマリサトクリフ,チャールズ・キーピング,Rosemary Sutcliff,猪熊葉子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/04/16
- メディア: 単行本
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サクソン人の掠奪、ヘンゲストやホーサの侵入、アンブロシウス・オウレリアヌスに率いられたブリテン軍の大戦闘。アンブロシウスは――これはまったく、思わず息をのむような思いつきでしたが、――ずっとあとになって中世の伝説が生まれた時、アーサー王としてうたわれ、たたえられた人物の原型だったかもしれないのです!
ローズマリ・サトクリフ『ともしびをかかげて』(下)岩波少年文庫
サクソン人の侵入というのは、最悪です。
サクソンの侵略となれば、これはもう最悪だ。剣を振りまわし、錨をおろし、大きな船から毛むくじゃらの大男どもが海岸へ上陸してくるのだ。
J・H・ブレナン/真崎義博訳『七つの奇怪群島』二見書房
しかし、最悪を通り越した絶望というのもあります。アクイラは妹を「海のオオカミ」に連れ去られ、のちに一緒に逃げることを都拒否されました。アクイラはそれを、自分が被害者であると信じることによって自分を建て直し、サクソン人に復讐することでそれを償わせるためにアンブロシウスの軍に身を投じます。
しかし、アクイラに待っていたのは政略結婚。自分のしたことが、妹にされたことに等しいと思えば思うほどに、アクイラの絶望は深まり、自分の子にさえ愛情を注ぐことはできません。
これは少年文庫で語る内容か?と思いつつ読み進めました。最後は、ハッピィエンドとはなりませんが一応の妥協点の中で終わってゆきます。
アクイラの人生はこれからもつづくのでしょう。しかし、この結末は、つらい。
結局、4~5世紀のあいだにブリトン人は大きく版図を失い、アングロサクソン人の王国を築くもとを作ってしまうわけで、そのなかで「マル」たちもたくさん生まれたことだと思います。そのなかで、アクイラはつねに両者に引き裂かれたままだったというのが、泣けます。
第一部の感想
「友情、努力、そして敗北!!」??サトクリフ『第九軍団のワシ』岩波少年文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ - 片割れ星第1号
第二部の感想
信じるもののために戦う??サトクリフ『銀の枝』岩波少年文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ - 片割れ星第1号
第三部上巻の感想
http://katawareboshi01.g.hatena.ne.jp/mori-tahyoue/20080716/1216211410