2008-11-18
■ [筆記][隋唐][田中芳樹]瀰漫せし微睡~~田中芳樹編訳『隋唐演義』二 中公文庫 
第二巻の主人公は隋の煬帝。後宮での生活が主に描写されるのでたるい。

- 作者: 田中芳樹
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しかし時勢はいよいよ急を告げ、ついに竇建徳は義起に踏み切ります。
巻末の対談でも話題になっていましたが、煬帝への筆は非常にやさしいのが隋唐演義の特徴なのかもしれません。煬帝は後宮に入り浸りで朝政をないがしろにしますが、その隙をついて私腹を肥やすものこそ天下の奸佞であり、確かに煬帝はたまに政務を執ると収賄や汚職の臣を残虐な極刑にかけるという役回りなのですよね。にもかかわらず佞臣が後を絶たないあたりが、煬帝の人徳なのでしょうけれども。
で、いよいよ大運河の開削と高句麗出兵が始まりますので、煬帝の天命も極まる、と言うところで時間に続きます。可哀想に!
■ [筆記][隋唐][田中芳樹]好漢、惜しむらくは天の時未だ来たらず~~田中芳樹編訳『隋唐演義』一 中公文庫 
再挑戦。

- 作者: 田中芳樹
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初めて読んだときには冒頭の楊堅伝(文帝紀ですがね)の退屈さに10頁も読めず挫折。かえすがえすも吉川英治の『三国志』は名作。あの、川岸で船を待って茶を買う劉備のエピソードは秀逸です。そして母が茶を捨てて「天下に志を持つのですよ」と諭すシーン。これは惹き込まれますよ。
で、我慢して読み始めるものの次から次へと登場人物が現れて早くも混乱。南朝北朝の創始者たちが羅列されますがこれは話にほとんど関係ありません。
文帝楊堅の次子楊広は兄を謀略で廃嫡し太子となるとついには文帝の突然死に際しその位を襲います。それはまあ、知っています。
秦叔宝がでてくるあたりから、ようやく面白くなってきます。第十二回、北斉の武門の血をひく秦叔宝は零落しつつも豪傑と交流してひとかどの名声を得ています。風雲の志で仕官しますが、公用の帰り道、宿の主に財産を見られてしまい、主張奇は邪心を起こします。
部屋の扉は長年の間に滑りが悪くなっていたので、張奇はいきなりそれを蹴破って室内におどりこんだ。そしてまっすぐ銀にとびかかった。無謀すぎた。叔宝は反射的に拳をあげ、一撃で水牛を打ちたおすほどの強烈な殴打を張奇のあごにくらわせた。ふっ飛んだ張奇は壁に激突し、頭蓋を砕かれて即死した。鼻と口から血を噴き出して床に落ちる。
外からいっせいに大声があがった。
「強盗が人を傷つけたぞ!」
張奇の妻の悲鳴。叔宝は愕然とした。
「死んだ人も不運だが、おれの兇運にも愛想がつきる。何でこんなことになってしまったんだ」
田中芳樹『隋唐演義』中公文庫
ヒャッホー!好漢たるもの、悪気はなくともちょいと撫でただけでうっかり小悪人を殺してナンボですよね。俄然面白くなってきました。