蜀犬 日に吠ゆ

2008-12-29

[][]フィリップ・K・ディック『まだ人間じゃない』ハヤカワ文庫 22:59 はてなブックマーク - フィリップ・K・ディック『まだ人間じゃない』ハヤカワ文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 短編集。

  • フヌールとの戦い The War with the Fnools
    • 人間とまったく同じ形状ながら2フィートの身長しかない異星人フヌールが地球を征服するため人間社会に紛れ込む。恐るべき熱線で人類を虐殺し対話の見込みのない侵略者を地球人は何度も殲滅したが、フヌールは第二波・第三波の襲来を行う。しかも今回は、地球人と同じ身長を手に入れる方法を見つけて!
    • おちはバレ(艶笑)。というか、下品。
  • 最後の支配者 The Last of the Masters
    • 支配される繁栄と、自由の貧困。支配される人びとは、支配者の由来さえ知らない。
    • あとがきでディックは支配者に共感を覚えていますが、私の疑問は、高い生産性を誇った都市が、なぜ「再生産」を行わなかったのかということ。ボールスは、機械のように粛々と自分の後継者なりコピーなりを作り上げてもよかったのではないでしょうか。あるいは、それをつくりだした二世紀前の文明は、それを未然に封じていたとでもいうのでしょうか。そこだけ疑問。
  • 干渉する者 Meddler
    • 時航機が人類の運命を変えてしまう。それはまあそういうものですよねえ。
    • 作者は巻末のメモで「美しい者の中には、醜いものがひそんでいる」というのが「わたしのメイン・テーマ」であるといっていますが、蝶の大群は禍々しいと思います。
  • 運のないゲーム A Game of Unchance
    • 「流星エンターテイメント興業が  お贈りする 魔術、フリーク、恐怖の離れ業、そして美女!」
    • 火星を維持することはほとんどあきらめられた時代、火星の開拓村にサーカスがやってくる。
    • しかしこれ、他星系からの侵略計画ということになっていますが、先進国と途上国間での搾取そのままという気がしないでもないです。もちろん地球人はもっと野蛮に地雷とかカラシニコフでそれを行うわけですが。
  • CM地獄 Sales Pitch
    • 作品メモでこのオチは失敗だったといっていますが、それほどとは思いません。むしろ代替案として出されたほうがよりつまらないような気もします。
    • 星新一や藤子Fをよめばおなじみのネタという気もしますね、これ。
    • しかしCMとか訪問販売というのはふつうに不法侵入でいいんじゃないか。
  • かけがえのない人造物 Precious Artifact
    • いつものように地球はプロクシマ人によって徹底的に破壊されてしまいます。火星のエンジニアだったピスクルは故郷の様子を知りたくてむりやり地球に戻り、子ネコとともに結局火星に帰ってこなければならなくなります。
    • ふーん。
  • 小さな町 Small Town
    • 四畳半SL大作戦。
  • まだ人間じゃない The Pre-Person
    • これは面白かった。いくぶん女性蔑視的な表現があり、男性は純真で無垢だという気色悪さがあったものの、それを除けば申し分ない。(そして多分女性蔑視を除くことはできないのでしょうけれど。)
    • 「生き物が無力であればあるほど、造作なくそれを殺してしまう人間がいる、これはどういうことだろう?」ひどい。
    • 「競争社会なのだ、と彼は思った。強者生存なのだ。適者生存ではなく、力を持つ者が生き残る。そして彼らは次の世代にその力をゆずろうとしない。強力にして悪しき古き者と、無力にして心やさしき新しき者との対立。」ひどい。
    • 「この件は、すでに経済および政治のあらゆる重要ポストを握っている支配階級が、若者たちを閉め出そうと――必要があれば殺してまで――しているコン・ゲームだ。この国には、年老いた者によるこの国への憎しみ、年老いた者による若者に対する憎しみ、憎しみと恐怖がある。」どこまでもひどい。ディック先生、SFにかこつけていいたい放題です。