蜀犬 日に吠ゆ

2009-01-03

[]ガブリエル・ガルシア・マルケス 鼓直・木村榮一訳『エレンディラ』ちくま文庫 22:39 はてなブックマーク - ガブリエル・ガルシア・マルケス 鼓直・木村榮一訳『エレンディラ』ちくま文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

エレンディラ (ちくま文庫)

エレンディラ (ちくま文庫)

  • 大きな翼のある、ひどく年取った男 ――Un senor muy con unas alas enormes
    • 初め家の中に大量の蟹の死骸がある理由がわからなかったのですが、どうも後の短編なども読んでゆくと夜の間に這いのぼってくるらしいです。コロンビアおそるべし。
    • 大きな翼のある、ひどく年取った男が現れることで村が騒動になる。
  • 失われた時の海 ――El mar del tiempo perdido
    • 海から薔薇の香りがしてきて村が騒動になる。ハーバート氏が現れて金をばらまき、海の底に行き、村を去る。
  • この世でいちばん美しい水死人 ――El ahogado mas germaoso del mundo
    • 大柄な水死体が村に打ち上げられる。村人たちは彼が生前から村にいたならどんな風であったろうかと妄想しながら死体を海に流す。(岸壁の漁村では、土に埋葬することは実現不可能の夢である。)
    • 貧しい村に異物が混じり込んでくるというモチーフが繰り返され、それは次第に現実感を失います。翼の男の村は、それでも見物人から金を巻き上げることに成功したが、ハーバート氏がばらまいたお金はすぐに村から失われてゆき繁栄は過去の幻想にすぎなくなります。水死人が評判になれば村も注目されるだろうというのは、在りもしなかった過去の記憶の捏造が未来の幻想を生み出して村人の心を支配してゆく、荒唐無稽もいいところの無双にしかすぎませんが、それでも村人たちの心をとらえて放すことがありません。
    • 自分たちの記憶を伝説でしか伝えることのできない、ほぼ歴史からは忘れられた辺境の村人たちにとっては、現在も未来も、すでに伝説や民話のなかにしかないものなのでしょうか。
  • 愛の彼方の変わることなき死 ――Muerte constante mas alla del amor
    • 上院議員オネシモ・サンチェスは医者から宣告された余命六ヶ月をいつもと変わらず過ごすつもりで遊説に出かけ、スキャンダルの恥辱にまみれた人生を選択する。
    • この話で視点は逆転。上院議員は、村人に生活を与える側の人間です。村人はそれを受けとります。しかし、村人は、それを知っている場合でもそうではないときにも、多くのものを差し出さなければなりません。未来や、過去のために。
    • 上院議員は村人たちにたくさんの幻影を見せる。町のどんな建物よりも高い大西洋航路の豪華客船や、カレンダーから織りなした、扇風機の風で飛ぶ蝶。そうして皆が帰った後で上院議員は自分のものを受けとります。扇風機の風で飛ぶ何千という紙幣。前科者の娘ラウラ・ファリナ。
  • 幽霊船の最後の航海 ――El ultimo viaje del buque fantasma
    • 少年は、幽霊船を何度も見ました。教会の塔よりも高い船、灯台の回転する光のなかで現れたり消えたりしながら、その船は針路を見失って、沈黙のなか座礁して砕け散ります。母親は子の言うことを信じないまま、フランシス・ドレイク時代の安楽椅子に命を吸われ、たったひとりの少年はその後も幽霊船に出会います。沖合に小舟でこぎ出して幽霊船に出会った彼は、針路を見失ったその船を暗唱に誘導することで、幻影と訣別することに成功します。
    • 幻影の幽霊船に別れを告げたために、村の浜辺には巨大な《ハラルクシラグ》の残骸が残されることになりました。伝説と歴史は正しい位置に戻されることになります。
  • 奇跡の行商人、善人のブラカマン ――Blacaman el bueno vendedor de milagros
    • 村にやってきた香具師ブラマカンに見出されて一緒に行商することになった少年はやがて癒しの力に目覚めて大金を稼ぐことになります。一時は分かれたブラマカンも再びもどってきて、蘇りの奇跡で詐欺をはたらこうとしますが、少年は永遠に生きることでブラマカンに永遠の懲罰を与えることにします。
    • 再び、村人に伝説を与える側の話。ブラマカンは詐欺で、少年は奇跡でそれを行い、奇跡の人は詐欺師を裁く権利をもっています。

  • 無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語 ――La increible y triste histria de la candida Erendira y de su abuela desalmada
    • 祖母は孫娘エレンディラに売春をさせて金を稼ぎます。翼を失ったオランダ人ウリセスは祖母を殺し、エレンディラは砂漠へと駆けてゆきます。
    • ”大人のための残酷な童話”の最後となる中編。エレンディラはなんでもない人間ですが、奇跡を起こさなければならない立場に立たされます。エレンディラの周りの人々は奇跡を感じますが、それはエレンディラの悲惨な運命でしかない、という話。



 画像はおなじみ「窓の十字架」

 小説を読むとき、わたしは一体何を読んでいるのだろうというのは自分でもよく分かりません。しかし、人と違うところを読んでいるのであろうと言うことは分かります。すべての人がそうなのでしょう、自分の読み取りたいものだけを読み取っているのだとして、では自分は一体小説に何を求めているのでしょう。ぼんやりとした感覚を、言葉にすることができずにいる、曖昧なら書くべきではないのかもしれませんので一応ここにテーマだけ書いておいて、あとでまとまったら書くかも書かないかも。