蜀犬 日に吠ゆ

2009-01-08

[][][]わたしを利用してくれてありがとう~~カート・ヴォネガット・ジュニア 浅倉久志訳『タイタンの妖女』ハヤカワ文庫 19:43 はてなブックマーク - わたしを利用してくれてありがとう~~カート・ヴォネガット・ジュニア 浅倉久志訳『タイタンの妖女』ハヤカワ文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 これを読んだのはそんなに昔でしたっけかねえ…

タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫 SF 262)

タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫 SF 262)

 スローターハウス5を読んで感想を書くため読もうと思ったら感想がなかったので話を確認。

 初読では、結構泣きました。こういう、強力な運命に抗おうとして結局押し流されてしまう話はぐっと来ます。押し流される運命というのが大体ろくでもないものなのでそれが強すぎると読むのが嫌になり、実際火星軍団が地球に侵攻するあたりはかなりページをめくるのもいやでした。火星軍団がみじめに敗北するして、何が楽しいのか?

 ラムフォードは人に支配されるのが大嫌いなくせに、人を支配することに躊躇はないのね。という感想だったのですが、二度目読んだらそれを分かっていてなお地球人を目覚めさせようという信念をつらぬいたようにも読めてこれはまた三度目読んだら全然違う感想になるかも。

 この小説は要するに*1メタ概念の問題。動植物をいいようにあやつる人類U*2、弱者を支配する強者、地球を通信機として操作するトラルファマドール星人トラルファマドール星人をつくって放置したもともとのトラルファマドール星人、もともとのトラルマファドール星人を滅亡に駆り立てた「崇高な目的」。抽象概念まで逃げることで人類の知性の限界に達するのでこれ以上は追えませんが、ヴォネガットさんはそうやって悲惨の根源を探ることの無駄を説いたのではないでしょうか。「メタ抽象」を理論化言語化することは、人類にとってなかなかに難しい試煉であると思います。

概要

  • コンスタンスがラムファードから未来の予定を知らされる。
  • 火星軍団が組織され、アンク(コンスタンス)が逃げ出す
  • ビーとクロノ
  • 水星でハーモニクス最高
  • タイタンでラムフォードがサロをなじる
  • みんな死んでおわり。

[][]そういうものだ~~カート・ヴォネガット・ジュニア 伊藤典夫訳『スローターハウス5』ハヤカワ文庫 17:24 はてなブックマーク - そういうものだ~~カート・ヴォネガット・ジュニア 伊藤典夫訳『スローターハウス5』ハヤカワ文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 そういうものだよねぇ~~。

 ちうか、上記『タイタンの妖女』のラパー裏見返し(著者の写真の載ってるとこ)をみたら、


  • タイタンの妖女
  • スローターハウス5
  • 猫のゆりかご
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを
  • ガラパゴスの箱舟
  • デッドアイ・ディック
  • プレイヤー・ピアノ

 となっていたので、てっきりこれが発表順だと思っていたのですが、全然違ったのですね。

順番からいえばプレイヤーズ・ピアノが最初で、「母なる夜」「猫のゆりかご」「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」と来るべきとだったのです。

 しかし、勘違いのまま『屠殺場5号』(これが旧題、早川書房ハードカバー)を読んでしまいました。


 内扉から、ヴォネガット先生、飛ばしています。

スローターハウス5

または 

子供十字軍

死と義務的ダンス

カート・ヴォネガット・ジュニア


ドイツ系アメリカ人四世であり

いまケープ・コッドにおいて

(タバコの吸いすぎを気にしつつも)

安逸な生活をいとなむこの者

遠いむかし

武装を解かれたアメリカ軍歩兵隊斥候

すなわち捕虜として

ドイツ国はドレスデン市

「エルベ河畔のフローレンス」の

焼夷弾爆撃を体験し

生きながらえて、この物語をかたる。

これは

空飛ぶ円盤の故郷

トラルファマドール星に伝わる

電報文的分裂症的

物語形式を模して綴られた

小説である。

ピース

カート・ヴォネガット・ジュニア 伊藤典夫訳『スローターハウス5』ハヤカワ文庫

 ドレスデン大爆撃を生きぬいたビリー・ピルグリムの物語。


 モンタナのロケット。

God grant me the serenity

to accept the things I

cannot change, courage

to change the things

I can, and wisdom

always to tell the

difference

(神よ願わくばわたしに変えることのできない物事を受け

いれる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇

気と、その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ)

カート・ヴォネガット・ジュニア 伊藤典夫訳『スローターハウス5』ハヤカワ文庫

 オバマさんの悪口ではないですよ。


 ビリー・ピルグリムが変えることのできないもののなかには、過去と、現在と、そして未来がある。

カート・ヴォネガット・ジュニア 伊藤典夫訳『スローターハウス5』ハヤカワ文庫

 しかし、これを「世界観」という観点から見るとバラモン教の「輪廻転生」でこうした議論はなされているわけで、ヨーロッパも二六〇〇年遅れでようやくここまで来たかという感じがしないでもないですね。仏教はもう、その先をいってますよ。

 ただ、タイタンとスロータでヴォネガットがいうのは仏教の語り残した部分なのかもしれません。モンタナのロケットの上掲の言葉は、人類の生きる意味そのものへの疑念でしょう。


 ビリー・ピルグリムはなじる。「もしみなさんがこれに抗議されるのなら、死がつらい悲しいものだと考えておられるのなら、わたしのいったことは一言もみなさんには通じていない」そして講演のしめくくりは、どの講演もそうであるように――つぎのような言葉、「さようなら、こんにちは、さようなら、こんにちは」

カート・ヴォネガット・ジュニア 伊藤典夫訳『スローターハウス5』ハヤカワ文庫

 というわけで、さようなら、こんにちは、さようなら、こんにちは。

*1:「要するに」というのは「俺の意見」の遠回しな言い方

*2:というのは作品には出て来ませんが、そういうものだと思います