蜀犬 日に吠ゆ

2009-01-12

[][][]鉄の勇気を受けついで 16:15 はてなブックマーク - 鉄の勇気を受けついで - 蜀犬 日に吠ゆ

ギリシア神話 (岩波文庫)

ギリシア神話 (岩波文庫)

 ミーノースはテーセウスとその仲間の逃亡を知って、ダイダロスに罪ありとし、彼とミーノースの女奴隷ナウラクテーとの間に生れた子イーカロスを迷宮内に幽閉した。彼は自分と子供のために翼を作り上げ、(アポロドーロス 高津春繁訳『ギリシア神話』岩波文庫

「イーカロス、翼をきちんとつけたか?」

「はい、ダイダロスお父さん。」

「翼で飛ぶときに、約束を守れるか?」

「はい、ダイダロスお父さん。イーカロスは翼が太陽のためにその膠が溶けて放れないように高みを、また翼が湿気のために放れないよう、海の近くを飛ばぬようにします。」

 生まれたときから迷宮にあり、母親どころか父以外の人間を見たことのないわが子を、ダイダロスは憐れんだ。

「迷宮を抜ければ、世界がある。太陽があり、海がある。おまえはきちんと父の後を飛ぶのだ、イーカロス。」

「はい、ダイダロスお父さん。」

「イーカロス、外へゆけばたくさんの男や女や男女や、牡牛や牝牛や魚や鳥を見ることができる。そうして私たちは仕事を見つけて、生きてゆくのだよ。」

「はい、ダイダロスお父さん。」

「イーカロス、イーカロス、イーカロス」

「外の世界にはたくさんの誘惑がある(太陽や海もそうだが)。イーカロス、私たちは強く生きなければならないのだよ。イーカロス、この暗い迷宮の中で強く生きてゆくために、私はおまえに強い名前を与えた。」

「ダイダロスお父さん、イーカロスの名は私を強くしてくれました。」

「外の世界に出たら、おまえはおまえ自身の名前で生きてゆくのだ。」

 ダイダロスは、ほっと息をついでから告げました。


「おまえは、女の子なのだよ、イーカロセー」