2009-01-13
■ [筆記][伝奇]国枝史郎『神州纐纈城』講談社大衆文学館 
『天馬侠』を読むはずが、気づいたらこちらを。

- 作者: 国枝史郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/03
- メディア: 文庫
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宿命や業を背負ったものどもが己の生き様をぶつけ合う伝奇小説。
- 土屋庄三郎
- N/N(個性なし)
- 主人公だが、一番影が薄い。武田晴信幕下の侍。
- ふとしたきっかけで手に入れた纐纈染めの布に自分の宿命を感じ、甲府を他国。
- 父は土屋庄八郎、母は高坂弾正の娘お妙の方。しかしお妙は庄八郎の弟土屋主水に心惹かれていたため、二人の関係を怪しんだ庄八郎は不義を疑う。主水、お妙、庄八郎の順に甲府から姿を消し、庄三郎は孤児となる。
- 纐纈布に「謹製 土屋庄八郎」を幻視。富士山麓をさまよううちに、富士神秘教団の里に落ち着き、誤解から私刑にされて本栖湖の水城に送られる。完。
- 直江蔵人(くらんど)
- G/C(善良なる秩序破壊者)
- かつて上杉の家臣であったが、人を殺す宿業にたえかねて薬師となって人を救うようになる。
- といいつつ魂は魔道に落ちて人の臓器を材料にした万能薬「五臟丸」づくりに手を染める。
- 一殺多生!一殺多生!多くは云わぬ
- 松虫
- 蔵人の娘。五臟丸づくりの助手。
- 直江主水。
- 松虫の従兄。松虫とともに蔵人の助手を行う。
- 三合目陶器師(さんごうめすえものし)
- E/C(暴走殺人鬼)
- 元小田原北条市の配下、北條内記。
- かつてあまりに醜い容貌であったために妻が美男と駆け落ち。すべてを失い富士山麓で盗賊となる。盗賊といいつつ仕事は殺人のみ。
- 醜い顔を整形で美男に作りかえる。
- 「姦夫!」「姦婦!」これは人を切ったときにつぶやくくせ。後半では手当たり次第に辻斬りをして、そうして「姦婦!」とさけんでみるようになる。
- 解脱とは何んだ!解脱とは何んだ!永世輪廻よ!永逝輪廻よ!活き変わり死に変わり人を殺すのよ!
- 血を見ると安心するので人を切り、二倍の不安に襲われて人を切り、四倍の不安に襲われて人を切る。
- ありとあらゆる悪人は、皆傷しい懺悔者なのだ。懺悔しながら悪事をする、懺悔と悪事の不離不即。悪人の心持ちが、偽善者に易々解って堪るものか。
- 苦痛は悪で快楽は善だ。
- 伴源之丞
- 北條内記から妻を奪った美男。美男しか取り得がないので男妾をして園女と暮らす。
- 園女ともども月子に不細工にしてもらう。
- 園女
- 北條内記から逃げた美女。美女しか取り得がないので妾をくりかえして源之丞と暮らす。
- 高坂甚太郎
- G/C(無垢なる殺人鬼)
- 高坂弾正の妾腹の息。他国した庄三郎を追討するため鳥刺に身をやつして富士山麓を旅する。
- 生き物を殺すっていいものさね。ピクピクと動く柔かい肌、生臭い血の暖か味、これじゃ殺生は止められねえ訳さ。
- 悪いことをした時が悪人で、善い事をした時が善人さ。
- 泥棒したいと思った時、泥棒しなけりゃあ悪事だよ。泥棒したいと思った時、泥棒すれば善事だよ。
- 月子
- G/L(芸術気質)
- 能面師にして造顔師。富士の人穴で鑿を振るう。陶器師を美男に作りかえたのもこの少女。
- 極重悪人の新面(にいおもて)を作ることが夢。そのため魑魅魍魎のうろつく富士山麓に住む。
- しかし悪人と交流するうち善悪の境界は次第に曖昧に。
- 悪人がこの世にないとすれば、そういう顔の持ち主とは、永久会うことは出来ないかも知れない。
- 仮面の城主
- E/L(思いこみ血吸鬼)
- 本栖湖の水城で人血をしぼる、纐纈城城主。その正体は土屋庄八郎。
- 水城に女を次々囲うが、裏切りをけして許さないため次々殺す羽目になる。
- 奔馬性癩患で体は醜く腐敗しているため、白布と能面でおおわれている。
- 特殊能力として、触れただけで相手の肉体を腐敗させる「奔馬性癩患」と、仮面の下の素顔をみた者を即死させる「メズサ」をもっている。
- 癩患が脳にまで達し、故郷甲府を伝染病の坩堝とする。しかし意識は朦朧。
- 光明優婆塞
- 富士神秘教団の教祖。その正体は土屋主水。
- 「懺悔」「忍従」「肉身刑罰」を宗旨とし、懺悔と共に生きる。
- といいつついまだその心は焦がれている。
- 特殊能力は触れるだけで奔馬性癩患を癒やす「奇蹟」。
- 塚原卜伝
- 直江蔵人と甲府へゆく剣豪。
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