蜀犬 日に吠ゆ

2009-01-30

[][]北方謙三『楊家将』(上)PHP文庫 16:46 はてなブックマーク - 北方謙三『楊家将』(上)PHP文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 華北に依る五代の生き残り北漢(その帝は後漢の親族)。五台山の軍閥楊業は一族郎党を率いてそれを支える。

楊家将〈上〉 (PHP文庫)

楊家将〈上〉 (PHP文庫)

 結局楊業と折り合いが悪くなった北漢は滅び、楊家軍は宋の幕下に入ります。さきに崩じた太祖趙匡胤の悲願は燕雲十六州の奪還。しかし大遼契丹国も幼帝を後見する蕭太后のもと、多士済々。

 楊業は軍人として、戦いに集中したいと考えますがそれが北漢宮廷との軋轢を生み、また宋に入ってからも文官や将軍たちとの距離感を作り出してしまいます。

 話の展開は大きく4つ。

楊業 その忠

 北漢の幕僚である楊家将は、しかし北漢の宮廷からは疎まれています。

 一つは、五台山付近の塩道を管理し、その利益を自分の軍事費に充てていること。楊業は独立した軍閥であるという意味ですが、とうぜん財政を管理する官僚からは評判が悪いし、ほかの軍団も、楊業がいつでも北漢を裏切ることができる証拠としてこれをうさんくさく思っています。

 もう一つは、北漢の正規軍が弱いため、楊業に頼らざるを得ないという引け目が楊家将が戦績をあげることをいとう態度に出てきます。

 宮廷のことにはかかわらない主義の楊業は自分の評判など気にかけませんが、息子たちの中や、腹心の王貴などは北漢に忠義を尽くすことに疑問をもっており、あるとき王貴は計略をもって北漢の皇帝が楊業の命を狙っているということを暴露してしまいます。楊業も覚悟を決めて宋に降ります。

六郎 将として

 アブラハムには七人の子*1。一人はのっぽであとはチビ。みんな仲良く暮らしてる。

 という歌が昔ありました。

 楊家の子たちはすべて優秀な将です。そして仲よし。みな同じように父親を尊敬し、楊家の将であることを誇りとしています。なんとなくその辺がご都合主義を感じますが、実話にオチはない、の小売りからいえばまあそうなのでしょう。

 しかし、六郎は、けっして能力が低いわけではないのですが、調練などをしても判断が人より遅れ、結果を出すことができません。弟の七郎はそういう点臨機の才に富んでいます。兄たちも心配なまま、楊家将は料との戦いに突入していきますが、実戦では六郎は驚くほどに果敢な将帥ぶりを見せて兄弟を驚かせます。六郎は、兵の負傷や死を怖れて調練では判断が鈍りましたが、死地におわれて肝が据わったことで大きく成長したのでした。めでたしめでたし。

四郎 その思い

 かたや四郎は冷静すぎるほど大局を見る。楊家将が宋に降るときも、遼に降る可能性を考えたほど。中華思想のもとで、ただ戦うだけの楊業に比べても将というより一段上の視点をもっています。その、ある意味ひねくれたともいえる性格は、母親のそれぞれちがう楊家のなかで、四郎の母だけは芸妓の出で、早くに死んだこともあり楊一族のなかで特別視されてきたことにあるとされます。

 一郎延平を除いては心を許す相手もおらず、四郎は一人楊家の本拠地代州を離れ、北平塞に楊家軍であることを伏せて独立した軍団を構えます。簫太后の娘瓊峨姫は戦場に志をもち大宋国に侵入しますが、北平塞の警備軍により大敗。雪辱を誓いますが母親から戦場に出ることを禁じられてしまいます。そして四郎はその女のことを記憶に留めます

 あと、楊家将はヒマさえあれば調練をやっているので訓練度はいつもMAXです。私が三国志Ⅴをやっていたころもそうで主力はつねに訓練100だったのでこれは得心がいきました。

草原の白い狼

 耶律休哥は簫太后の不興を買って土漠にいますが、そうとの決戦が近づき、総大将の耶律奚低は彼を呼びもどそうとします。ただし、簫太后にバレないようにあくまで耶律奚低の麾下という扱いで。

 耶律休哥はみごとに戦果を出して簫太后に実力を認めさせ、独立した軍団として行動する権限を勝ち取ります。狙いは当然、楊家軍。


 といったところで上巻はおしまい。

*1:ええと、ハガルの子イシマエル、サラの子イサク。二人しか知りません。