蜀犬 日に吠ゆ

2009-03-18

[][]さだめは蟷螂~~ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 伊藤典夫・浅倉久志訳『愛はさだめ、定めは死』ハヤカワ文庫 01:09 はてなブックマーク - さだめは蟷螂~~ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 伊藤典夫・浅倉久志訳『愛はさだめ、定めは死』ハヤカワ文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 読みました。なんというか、結構つらい。名作扱いされていますが、私には疑問。

 一番ステキなのはタイトルなのかもしれません。

 読むのがつらい理由の一つは、ジェンダー。

 作者ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアが女性作家であることはもう知られたあとなので私はダメージが少ないのだと思いますが、結構ジェンダー的にハードな話が多くて気持ち悪い。

 もう一つは、ヴィジュアル。

 エイリアンだの異星生物がよく分かりません。「無用の長物だった特別な手が、生きいきと解きほぐされ、血ぶくれし、口にわきだす強烈な汁をいっときも休まずかきまぜながら――おまえの上下や周囲にまわり、縛りはじめたのだ。」どれがなんだって? 想像力が乏しいのでついていけません。


すべての種類のイエス All the Kinds of Yes

 エネルギー保存の法則から言えば、太陽系銀河が滅びるのもマゼラン星雲が滅びるのも順番の前後だけの問題ではないでしょうか。

「カバンをあけないのかい?」とRTがせっついた。「おお、ガンダルフ。地球の最高の一日。いま、ぼくはそれを生きている。最初のエイリアンとの接触。ぼく。きみたち」彼はつけたした。

 大学生がガンダルフを語る。ふっるーーー。

楽園の乳 The Milk of Paradise

 思い出は過去を美しくします。どんな過去であれ。深きものどもとともに過ごした思い出でさえも。

そしてわたしは失われた道をたどり、この場所を見いだした And I Have Come upon This Place by Lost Ways

 惑星探査の派遣先で、自腹で探査船をとばす。これが未来社会か。欠員を補充するために調査団の白衣組にもぐり込んだ主人公のコンプレックスが、脱走につながるほどのことかいまいち共感できず。なんとなくなし崩し的に船に帰れなくなったのではないでしょうか。

 失われた道は、隠された道だったかもしれないし、そうでないかもしれません。

エイン博士の最後の飛行 The Last Flight of Doctor Ain

 香港の医師がSARSに罹患したまま関西をあちこち旅行した事があったような記憶が。

 どうして、彼女の命と世界とを天秤にかけようとしたのでしょうね。

アンバージャック Amberjack

 ルー、そしてポンピー。取り替えのきくfemale。ずうずうしい女が生き残る。

乙女に映しておぼろげに Through a Lass Darkly

 広告の禁じられた未来社会。法をかいくぐるメディアとしてのクローン。

「そのとおり」ミスター・キャントルは、椅子の背にもたれ、厳粛な顔になる。「昔よく使われた流儀の広告は、法律違反だ。『製品の合法的使用でない方法による、販売促進を目的とした表示』はね。古い時代には、あらゆるメーカーが、方法と場所をえらばず、われがちに自分の製品をほめそやしてもよかった。しまいには、メディアのすべての風景の大半が、猛烈な表示競争に占領されてしまった。その競争はひどく不経済なものになった。大衆は反抗した。そして、いわゆる〈押し売り防止法〉このかた、売り手は、条文を引用すると、”製品の正当な使用または店内販売の際にのみ見える、製品そのものの表面または内部への表示”だけしか、してはいけないことになったんだよ」

 広告の話を擱くと、問題は、ヒーロー(デイビー)が救いたいのは「美形クローン」なのか「心のキレイなブサイク女」なのかという単純な話。ヒーローは「美形クローン」を量産して自分の欲望を満足させる道を選ぶ。当然。

恐竜の鼻は夜ひらく The Night-blooming Saurian

 恐竜ハンター。コプロライト(糞石)の起源。

男たちの知らない女 The Women Men Don't See

 女にとって男はエイリアン。エイリアンもエイリアン。つまり同じということ。これはSFの設定が効いていると言えば言えます。ティプトリーが女性であることが明かされた後ではそれほどではありませんが、男性だと信じられていたころもあったそうで、女性の心理をこんなに共感的に残酷に書いてしまう作家は、恐ろしかったろうと思います。

断層 Fault

 時間にひっかかるひっかかりを奪われた男。なんだかぬるぬるするらしいです。そうかなあ。

 奥さんが同じ罰をうけることを望むのはいまやパターン化していますよね。『火の鳥』なんかで見たような気がします。

愛はさだめ、さだめは死 Love Is the Plan the Plan Is Death

 タイトルが秀逸。邦題もいい。しかし話はよく分かりません。カマキリ夫婦。冬たちが大きくなる。

最後の午後に On the Last Afternoon

 三つの願いは叶えられ、主人公は友達と、すべてを失う。何が裏切りなのか、よく分かりません。