蜀犬 日に吠ゆ

2009-05-07

[]忌野さん 17:45 はてなブックマーク - 忌野さん - 蜀犬 日に吠ゆ

 今週はRCサクセションを聞いていました。理由はもちろん追悼。

THE RC SUCCESSION BEST ALBUM WONDERFUL DAYS 1970-80

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GREATFUL DAYS

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 しかし、以前聞いたのと同じ感想でやっぱり感心しないというか、あの声質やあの歌唱法がわたしは苦手なのでかなり減点なのでしょうねえ。CDを買ったのは、杉浦茂グッズの一貫のつもりでしたしね。


[][][]あえなく打ち切り?~~吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫 21:36 はてなブックマーク - あえなく打ち切り?~~吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

神州天馬侠(三) (吉川英治歴史時代文庫)

神州天馬侠(三) (吉川英治歴史時代文庫)

 たった一枚の手紙で伊那丸様が宗旨替え!急転直下の第三巻。この唐突さ、まるで打ち切り?

 竹童は、さびしかろ。

吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫

 の名台詞で幕を閉じる、第三巻堂々の完結。相変わらず納得のいかない結末。


 今回の吉川先生の小ネタ。甲州の御岳で行われる兵法大講会に、天下の腕自慢が集まるのですがそれぞれ部門別に分かれて、「軍学部」「剣道部」あたりはいいのです。しかし、「忍法部」ってどうでしょう。

 その忍法部に署名されているものは――

百地流 霧隠才蔵(浪人)

魔風流 魔風来太郎(伊賀郷士)

同 流 永井源五郎

愛洲移香流 天狗太郎(浪人)

戸沢流 猿飛佐助(浪人)

甲賀流 虎若丸(甲賀郷士)

 などという人々で、その名を見るからに菊池半助のこんどの試合はすこぶる苦境にあるらしく、

「ウーム、猿飛もきているか……」

と、うめくようにいって顎をおさえたままかがんでいる。

吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫

 普通考えて偽物だと思います。菊池先生、そんなに悩まなくとも。

 ところで、この神州天馬侠ではまだ真田源次郎(のちの大軍師幸村)は二十歳にならぬ若年ものなのですが、猿飛とか霧隠ってこのころ何歳の設定?先代とかいましたっけ?


 ストーリィとしては、伊那丸たちが留守にしているうちに小太郎山の砦は大久保石見守長安の軍の手に落ちて咲耶子が囚われてしまう。

 危地を脱した竹童をクロが救う。

 翼を休めていたクロは、さらに羽をうって舞いあがった。けれど、さすがな大鷲も、二、三歳の嬰児(あかご)なら知らぬこと、竹童ほどな少年のからだをくわえてそう飛べるはずはない。

吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫

 竹童と蛾次郎のふたりを背に乗せて幾日も飛び回ったにしては、クロの霊力がかなり失われています。それはこのあと「伊那丸・忍剣にしかなつかなかった」霊鷲が徳川家のお小姓とんぼ組のこどもたちにたちまち飼い馴らされてしまった事からもわかります。


 で、咲耶子さんですが、果心居士が

 「で、なによりあんじられたのは、万が一にも、咲耶子の身を徳川家のほうへとられると、おそらく、ふたたび助け出すことができまいということであった。なぜといえば、家康の心のうちには、いよいよ邪計の萌しがみえる。――

吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫

 と、忠告してくれた11頁のちには、

 そのさわぎに、門人すべてではらって、幕のうちには人影もない。

 ただ、咲耶子ひとりだけが、柱にもたれて休んでいた。

 「ウム、いるな」

 こううなずくと半助は、幕をあげて、いきなりそこへ飛びこんだ。

 とたんに、あッ――と洩れた咲耶子の声が、糸を切ったように、中途からポツンときれて、それっきり、あとはなんの音もしなかった。

吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫

 このとき忍剣、龍太郎、小文治、蔦之助は検証役の鐘巻一門、それに大久保以下徳川勢ともみあっていたのでしかたないといえばしかたないのです。

 紛擾をきわめている一方では、徳川方のそんな奸計を、夢にも知ろうはずがない。

吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫

 当然、忍剣が正気を失います。

 ふだんは、無口のほうで、伊那丸にたいしては柔順であり、友情にもろい男であり、小事にこだわらず、その、鉄杖に殺風を呼ぶことも滅多にしない男であるが、いったん、そのまなじりを紅に裂いたときには、百槍千甲の敵も食いとめることができないし、かれの友だちでも、手がつけられない忍剣だった。

 その忍剣が、堪忍をやぶって、鉄杖と鉄腕のつづくかぎり、あばれまわるのであるから、ほったて小屋どうような狩屋建(かりやだて)は片っぱしからぶちこわされ、召捕ろうとする、新手も新手も、猛猪に蹴ちらされる木の葉のように四離し、散滅して、手負いの数をふやすばかり。

吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫

 昔は気づかなかったのですが、

驚いたのは、群集の去ったあとで、矢来のそとにあんじてながめていた、小幡民部である、武田伊那丸である。

吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫

 こっちが驚きですよ。咲耶子がクロの背から撃ちおとされても徳川勢との力比べが始まっても

 すると、ひとり、矢来のそとの群衆のなかで、

「民部、こまったことになったものだの」

 と、ささやいた人があった。

吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫

 バカ殿だ~~~! 

 そしてようやく鎮めに行く。咲耶子は浜松へおくられ、忍剣は神域を血で汚した罰として捕縛されます。すべては手遅れ。

 気づきませんでしたが、伊那丸って、若年にしては信玄公再来の御器量とかみんなほめますが、およそ戦略戦術というものを組み立てないのでいつも呂宋兵衛の罠が成功しますし、民部も民部で「策はないか」と聞かれてから考え出すような軍師っぷり。ああそうか、仕える主君を間違えたり、あるいは主君に阿り甘やかすような臣下ばかりでは、武田家再興など、おぼつくはずもございません。

 「なるほど。だが、これだけではまだ天馬侠の侠友がひとりもれているぞ」

 「民部どのもおられる、龍太郎、小文治、蔦之助、すべての者がそろっているが……あ、咲耶子か」

 「咲耶子もそうだが、竹童も欠けているのではないか」

吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫

 忍剣はかろうじて咲耶子の事を覚えていましたが、伊那丸含めほかの天馬侠一党は、咲耶子を「いなかったもの」にする気配が濃厚。果心居士の嫌な予感が大当たり。だが、


 竹童は、さびしかろ。

吉川英治『神州天馬侠』三 講談社文庫

 結論からすると、私は忍剣が大好きだということですね。

 それでは。

 さらばじゃあ。



目次メモ

  1. 鉱山掘夫(かなやまほり)の知らぬ山 7
  2. 山掘夫(やまほり)、山にからかわれる 26
  3. 毒水に酔う砦 34
  4. 緋おどし谷の少女たち 52
  5. 汝ら! なにを笑うか? 72
  6. 地蔵行者の変わった旅 87
  7. 諏訪神(すわがみ)さまの禁厭灸(まじないきゅう) 106
  8. 馬糧(まぐさ)小屋の奇遇 124
  9. 勘助流火合図 134
  10. こんがら・せいたか 146
  11. 三太郎猿の早飛脚 157
  12. 星に泣く使者 170
  13. 愛の旅人 180
  14. 築城の縄取り盗み 194
  15. ひとり探す子・ふたりの子 206
  16. 兵法大講会(へいほうだいこうえ) 222
  17. 虚空に飛んだ栴檀刀 243
  18. 美女天に遊ぶ 258
  19. 文殊菩薩とほか四菩薩 266
  20. 紅白の鞠盗み 279
  21. 幕裏にひそむ妖術師 295
  22. 神馬草薙と早足の男 308
  23. 神は欺くべからず 316
  24. 刑罰の千年山毛欅(ぶな) 337
  25. 菊亭家の密使 371
  26. 故郷へ、西の都へ 386

『神州天馬侠』2の感想

『神州天馬侠』1の感想