2009-06-10
■ [筆記][SF]何ぴとも一島嶼ならず。われらはみな陸の一塊~~ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴えたやりかた』ハヤカワ文庫 
ど真ん中ストレートのサイエンス・フィクション。
人類連邦の活動範囲の北限にある<星溝(リフト)>。
もちろん〈リフト〉にもまったく光がないわけではない。他と比較して星の数が少ない空間というだけである。科学者たちも、べつだんそれをたいした謎とみなしてはいない。基本的な濃度構造の中の定常波か乱流、銀河系の渦状腕とそのあいだの裂け目、これらを創りだしたものとおなじ勾配を持つ、散らばったひとつのかたまり。これに似たリフトは、未踏の星野のひろがりの中に数多く見出される。たまたまこのリフトは、連邦宇宙といういびつな球体にとって、便利な北の境界を形づくってくれているだけのことだ。
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴えたやりかた』ハヤカワ文庫
北ってどっち?

- 作者: ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1987/10/01
- メディア: 文庫
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The Starry Rift
物語は、リフトで地球人類がエイリアンにコンタクトを取ったころの独立した三話を、デネブ大学の図書館でコメノの二人が読み解くという形式。
たったひとつの冴えたやりかた The Only Neat Thing To Do
訳者あとがきによれば、
書評者に「この小説を読みおわる前にハンカチがほしくならなかったら、あなたは人間ではない」とまでいわしめたこの中篇
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴えたやりかた』ハヤカワ文庫
ということで私はエイリアン決定。この手のお涙頂戴は、いまはありふれていますからねえ。いまどき「ヒロインが死ぬから号泣」はないですよ。ない。
ヒューマンのコーティとイーアのシルが不幸なコンタクトをとり、結局その星域は閉鎖される話。
いまではイーアドロンのことはよく知られている――きみたちも防疫隔離規定のことは、もう聞いたかもしれない」
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴えたやりかた』ハヤカワ文庫
十分に知能の発達した生物でも、母性から遠くはなれた環境の中、理性だけで生活を維持することはできない。であればあれ、宇宙に乗り出すものは自らの本能をもコントロールできなければならないという話。
タイトルがいいですよね。ニートがすでにNeatのダジャレであることを説明する気力もありませんが、このころはNeetなんて言葉を使う人いなかったのでしょうねえ。シルに欠けていたのがEducationでありTrainingであったとするなら、ダジャレが成立しそうでもあります。……そんなこと考えていたら、泣いている暇は、ない。
グッドナイト、スイートハーツ Good Night, Sweethearts
ヒューマンしか出てきませんが、一方は連邦のヒューマン、もう一方は暗黒界のそれ。「海賊」と「解体屋」の戦いって、最近ほかでも読んだばかりのような気がします。
アクションまたアクションの、胸くそ悪くなるような冒険活劇。
衝突 Collision
ヒューマンとジールタンの不幸なファーストコンタクト。ハッピーエンドではありますが。
そもそもジールタンはすでに「暗黒界」のヒューマンとの戦いを始めている時期に当たり、連邦のヒューマンなどというものが信頼できるとは思えなかったので、文明間の戦争も辞さない覚悟でした。しかし、いくつかの偶然が重なってわだかまりが溶けてゆきます。ふーん。