蜀犬 日に吠ゆ

2009-07-01

已んぬるかな

[][][]生きるためには、他者を犠牲にしなければならない~~ジャック・ヨーヴィル『ドラッケンフェルズ』HJ文庫 ホビージャパン 19:27 はてなブックマーク - 生きるためには、他者を犠牲にしなければならない~~ジャック・ヨーヴィル『ドラッケンフェルズ』HJ文庫 ホビージャパン - 蜀犬 日に吠ゆ

ドラッケンフェルズから、2年……。いよいよ積ん読を崩せるのでしょうか。

 (ちなみに、2年というのは読書ペースが遅くて、しかも同じ本を何遍も読み返す私としては積ん読熟成期間としては短い方です。)

 ホラーだと聞いていたので、あんまりザンコク描写があると嫌だなあ、と思っていましたが、けっこう大丈夫でした。もちろん、ヒロインが吸血鬼だったり出て来るキャラクターのほとんどが最低の人間なので残酷なシーンは多いのですが、抑制がとれている表現なので残酷さに嫌悪感は覚えても読み進める気を削ぐほどではない、私にとっては非常にバランスのいいホラー小説でした。


 ストーリィも面白く、いろいろなギミックも仕掛けられていてクライマックスにむけて交錯する糸がまとめ上げられてゆくテンポもいい。もちろん、ゲームの設定もそこそこ踏まえられているので世界背景の説明(死の神モールとか、ワープストーンとか)が最小限に抑えられつつ、それが奥の深そうな世界観を演出しているのも小気味いい。


 この小説のテーマは、結局、標題のようではないかと思うのですがどうでしょう。ヒロインであるジュヌヴィエーブは六百何歳だかの女吸血鬼で、人間の血を「食餌」として摂取します。ヒーローのデトレフは、俳優であり演出家であり脚本家であり、「他人の人生をまねる」ことを生業とします。悪の〈大魔法使い〉ドラッケンフェルズは近隣の、あるいは異世界の弱者たちの命を奪い、もしくはその生をなぶる事によって悪を実践し、永遠とも思える時間を生きつづけるのです。自分では働くことをしない帝国の貴族たち、足を引っ張り合う監獄の罪人たち、とにかく生きにくいオールド・ワールド(作品註では既知世界、ノウン・ワールド)ですから、相互扶助などということを言っていられないのです。

 だからこそ、希だからこそ、思いやり、友愛、そういった人間の美しい部分が煌めいて見えるのかも知れませんけどね。







 目次と概要 ネタバレを含むので注意! (カッコの中は、各場の主人公

目次
  • プロローグ 二十五年前(ジュヌヴィエーブ) 11
    • 一場
      • ドラッケンフェルズ城外。
      • ウエリの裏切りでイェハンが死ぬ。
    • 二場
      • ジュヌヴィエーブがドラッケンフェルズを思い返す。
    • 三場
      • ドラッケンフェルズ城内に侵入。毒の宴の間。
    • 四場
      • 呪いによる仲間割れ。
      • ファイト退場(リタイア)。
      • ルディ退場。エルツベトがその場に残る。
    • 五場
      • 王者の謁見室。
      • ドラッケンフェルズと対峙。ジュヌヴィエーブ退場。

  • 第一幕 53
    • 一場(デトレフ)
      • マンドセン城砦の紹介。監獄の掟。
      • 『シグマーの真実』上演失敗の顛末。
    • 二場(ジュヌヴィエーブ)
      • 修道院〈永遠の夜と慰めの教団〉でレディ・メリッサと話す。
      • ジュヌヴィエーブはヘンリック・クラリイとともにアルトドルフに旅立つ。
    • 三場(デトレフ)
      • オスヴァルトが面会にくる。
    • 四場(マクシミリアン)
    • 五場(デトレフ)
      • オスヴァルトがデトレフに魔法使い打倒の演劇を依頼する。

  • 第二幕 100
    • 一場(デトレフ)
      • デトレフは演劇の仲間を集め始め、城砦をあとにする。
    • 二場(リリ)
      • リリが出演交渉に応じる。
    • 三場(ルディ)
      • アル中となったルディがオスヴァルトに再会する。
    • 四場(デトレフ)
      • アルトドルフで『ドラッケンフェルズ』脚本の制作が始まる。
    • 五場(デトレフ)
      • ローヴェンシュタインがドラッケンフェルズ役になる。
    • 六場(シスター・クレメンティーネ)
      • エルツベトはオスヴァルトの使者を殺し、みずからの命も絶つ。
    • 七場(デトレフ)
      • ケレトが皮革加工の技倆をみせる。
    • 八場(デトレフ)
      • リリが現場に到着。
    • 九場(ローヴェンシュタイン)
      • ローヴェンシュタインが庇護者(パトロン)と会う。
      • 悦楽タイム。
    • 十場(デトレフ)
      • ブロイゲルがドワーフと揉める。
    • 十一場(ファイト)
      • ファイトが〈盗っ人〉エルノを捕らえる。
      • ファイトがオスヴァルトの使者に発見される。
    • 十二場(デトレフ)
      • デトレフが幽鬼の修道僧たちに警告される。

  • 第三幕 151
    • 一場(ジュヌヴィエーブ)
      • アルトドルフに到着したジュヌヴィエーブがオスヴァルトと再会する。
    • 二場(デトレフ)
      • ジュヌヴィエーブがデトレフに紹介される。
    • 三場(ローヴェンシュタイン)
      • ローヴェンシュタインがモール神殿のエルツベトの遺体を損壊する。
    • 四場(ジュヌヴィエーブ)
      • 劇団がドラッケンフェルズ城に出発する。
    • 五場(ルディ)
      • ドラッケンフェルズ城で宴会が催される。
      • ルディがエルツベトと再会する。
    • 六場(デトレフ)
      • リリが問題を起こし、ローヴェンシュタインが事態を収める。
    • 七場(マクシミリアン)
      • マクシミリアンが死ぬ。
    • 八場(ジュヌヴィエーブ)
      • ジュヌヴィエーブとデトレフがクラリイに呼ばれ、毒の宴の間に向かう。
    • 九場(デトレフ)
      • ルディの死体を検分する。
      • ネーベンツァールが城から追放される。
    • 十場(ブロイゲル)
      • ブロイゲルがみずからの人生を思い返し、変異種(ミュータント)である自己をみつめる。
    • 十一場(カール・フランツ)
    • カールフランツがマクシミリアンの弔問に訪れ、オスヴァルトに会う。

  • 第四幕 228
    • 一場(デトレフ)
      • ジュヌヴィエーブとデトレフがメネシュの惨殺現場を探し出す。
      • クラリイが斧槍兵(ハルバーディア)とともに人殺しを強襲する。
      • 現場から逃走した犯人を追い、ブロイゲルが変異種であることが曝かれる。
    • 二場(カール・フランツ)
      • オスヴァルト、帝国貴顕とともにドラッケンフェルズ城へ向かう。
    • 三場(デトレフ)
      • クラリイがブロイゲルを拷問し、変異がすすんだブロイゲルは破裂する。
    • 四場(デトレフ)
      • デトレフがブロイゲルの葬儀を行う。
    • 五場(ファイト)
      • ファイトがドラッケンフェルズ城からの脱出を試み、昔の冒険仲間に会う。
    • 六場(ジュヌヴィエーブ)
      • 『ドラッケンフェルズ』の最終リハーサルが終わり、貴族たちの晩餐会が催される。
    • 七場(ローベンシュタイン)
      • ファイトの骨が取り出される。

  • 第五幕 283
    • 一場(デトレフ)
      • 開演一時間前。
      • リリが出演を拒否する。
    • 二場(カール・フランツ)
      • ジュヌヴィエーブがリリの代わりにジュヌヴィエーブ役をつとめて『ドラッケンフェルズ』開演。
    • 三場(ローベンシュタイン)
      • ローベンシュタインが犠牲者の眼球をのみくだす。
    • 四場(ジュヌヴィエーブ)
      • 劇がすすむ。
    • 五場(デトレフ)
      • デトレフが舞台裏に引っ込む。
    • 六場(ジュヌヴィエーブ・デトレフ)
      • 劇が第五幕(クライマックス)に至る。
      • ローベンシュタイン=ドラッケンフェルズがゲシュアルド=メネシュを殺す。
    • 七場(カール・フランツ)
      • オスヴァルトが裏切りを明らかにする。
      • ドラッケンフェルズが復活する。
    • 八場(ドラッケンフェルズ)
      • 二十五年前に語られなかったドラッケンフェルズの死が明らかになる。
    • 九場(ジュヌヴィエーブ・デトレフ)
      • ジュヌヴィエーブとデトレフがドラッケンフェルズに戦いを挑む。
    • 十場(ジュヌヴィエーブ)
      • ドラッケンフェルズとジュヌヴィエーブが格闘する。
    • 十一場(デトレフ)
      • シグマーの槌が顕現する。
    • 十二場(ドラッケンフェルズ)
      • ドラッケンフェルズが死ぬ。
    • 十三場(カール・フランツ)
      • オスヴァルトが観客席を飛び出す。
    • 十四場(オスヴァルト)
      • オスヴァルトが舞台に立ち、ジュヌヴィエーブと対峙する。
    • 十五場(オスヴァルト)
      • オスヴァルトが死ぬ。

  • 結び 336
      • エピローグ