蜀犬 日に吠ゆ

2009-07-21

[][][]信仰・純愛・騎士道~~ローズマリ・サトクリフ『白馬の騎士』下 原書房 22:05 はてなブックマーク - 信仰・純愛・騎士道~~ローズマリ・サトクリフ『白馬の騎士』下 原書房 - 蜀犬 日に吠ゆ

 読了。

 上下巻通しての感想。

主人公アン

 『白馬の騎士』は、「戦闘・歴史」パートと「恋愛」パートに分かれており、私は戦争部分を面白がったのですが、作品の主題としては、アンがトマスへ愛をささげる方が中心です。

 「サルまん」で少女漫画は相撲の仕切りだ、という話題がありまして、本命の彼とがっぷり組んでしまったら話が終わってしまうので、気合があいそうであわなくて、こっちが準備万端だと向こうが手をついてくれない、向こうの気が乗ってきているのにこっちはどうも立てそうにない、これが少女漫画だ、という話。

 『白馬の騎士』では、アンはつねにトマスとともにありたいし心を通わせたいと思っているのですが、トマスの方は妻に感情をぶつけるよりも礼儀正しさを優先させたがるし、もともと人づきあいが得意でないということになっています。

 そこに、内乱の勃発。トマスの心は戦争に向かい、激しい戦いからの揺り戻しのように、自分の弱い部分をアンにさらけ出します。従軍したアンはそうやって、弱った夫を支えることで心の通い合いを実感し、最後は「トマスの帰ってくる場所を準備しておくこと」に自分の居場所を見つけます。


ドンキホーテ

 セルバンテスのドンキホーテは1605~16年にかけて発表されました。1642頃にはもう英訳版(ギルバート・シェルドン訳)があったのですか。スペインでは大ブームを引き起こし、たくさんの模倣作品が出版されたり海賊版が出回ったのでセルバンテスも続編を書いたわけで、ヨーロッパを席捲したのでしょうねえ。それを話に絡めてくるあたり、さすがのサトクリフ。


キウィタスデイ

 未詳。


 目次と内容

  • 第13章 純白の女神
    • ブラッドフォード攻城軍に捕らえられたアンは司令官のニューカースル卿に乱取りの許可を撤回するように求める。
      • 卿の枕元に「純白の女神」があらわれて乱取りは中止となる。
  • 14章 しんがりの戦い
    • 議会派は司令部をリーズからセルビーまで後退させる。トマスは娘モルをつれてしんがりを受け持つ。
  • 第15章 愛の贈り物
    • モルは街道脇のジバーダイクの農場に身を隠す。モルと知恵遅れのディッケンが友達になり、猫の「たんぽぽ」をもらう。
  • 第16章 ニューカースル卿の馬車
    • 「純白の女神」の伝説がブラッドフォードで語られる。
    • アンは解放されてニューカースル卿の弟サー・チャールズ・キャヴェンディッシュの護衛でキングストン・アポン・ハルへ向かう。
  • 第17章 ハンティンドンシアの郷士
    • ニューカースル軍がハルの包囲攻撃を始める。
    • 議会派はハル防衛のために援軍を派遣する。ウィロビー卿とクロムウェル大佐がハルに入城。
      • 待ってました! 
    • 王党軍は三軍団からなる。
      • 一つはオクスフォードに常駐する司令本部。
      • 二つめは北のニューカースル軍。
      • 第三軍はホプトンとモーリス王子の指揮で西からロンドンを狙う。
      • 軍の編成と戦略はルパート王子が担当する。
    • スコットランドとイングランド議会の「厳粛同盟」が成立し、レズリーのスコットランド軍が南下準備。
    • クロムウェルがモルに古い金貨を贈る。
    • トマスとクロムウェルは遊撃隊となる。
      • われらこれより遊軍となるべし(張遼)。
  • 第18章 きざし
    • ニューカースル軍がハルを包囲攻撃。
    • オープンショウ医師がモルの歯を抜く。
    • オープンショウ医師がサー・ウォルター・ローリ卿への思いを語る。
  • 第19章 マルティヌス祭
    • ニューカースル軍は(女王のポケットピストル)カルヴァリン砲を2門とも失い、ヨークへ撤退。
    • トマスとアンはナンアップルトンに帰る。
    • マルティヌス祭は11月11日。どんな祭かは知りません。
    • アンは戦禍を避けるためモルとともに自分のふるさと、ロンドン郊外のハックニーに帰還。
      • ハックニーの旅籠はフリート街の(スリーブラックバード亭)。
  • 第20章 キウィタスディ――神の都
    • 国王チャールズ1世はアイルランド遠征軍を本国に呼び戻す。指揮官は「血染めの」バイロン卿。
    • アンはトマスの祖父マルグレイブ卿のもとを尋ねる。
      • マスグレイブ家は熱心な王党派なのにね。マルグレイブ卿の子と孫は議会派。
      • マルグレイブ卿はレスター伯のもとオランダで戦った。
        • レスター伯は「女王の美青年コック・ロビン」だそうで、だーれがころした? コックロビン?
      • マルグレイブ卿はスペインの無敵艦隊(アルマダ)との戦いで戦功を上げて叙勲された。海賊じゃないッスか。
    • 「東部の荒くれ男」クロムウェル大佐が中将に昇進。バスターコールに呼ばれ……騎兵隊だから兵科が違いますね。
      • クロムウェルが心のなかに描き、その弁舌で周りの人の心のなかに描くもの、それが「キウィタスディ――神の都」
        • アンの人物評。トマスは、なによりも「正しいこと」を優先させ、クロムウェルは「必要なこと」を優先させる。
        • トマスは、ドンキホーテなのだと。
    • トマスから信書が届く。
  • 第21章 戦いの序曲
    • 議会派と同盟したスコットランド軍が南進開始。
    • トマスは女傑シャーロット・デ・ラ・トレムイユが立てこもるレイサム邸を攻撃するが膠着。
    • 転進したトマスは、ヨーク知事で内乱前には友人であったジョン・ベラシスをセルビーの戦いで破る。
    • 議会派は連合軍であるため戦闘が長びくにつれ指揮系統が乱れる。
      • スコットランドの「盟約者」(カヴェナンター)たちが作戦会議に参加してますます混乱。
    • ルパート王子の軍が北進をはじめ、レイサムを解放。
    • 決戦の地は、マーストン丘陵(ムア)。
      • 役者が揃う。まだクロムウェルは到着してませんが。
  • 第22章 森の花
    • マーストンムアに両軍が集結。
      • ルパート王子の陽動作戦で議会派のレーベン隊はタドカスターにおびき出されそうになり、急遽引き返す。
      • トマスは右翼騎馬隊の司令官。
    • (ロングマーストンの溝)をはさんでにらみ合いがつづく。
    • 策を弄するルパートが、食事の休憩のふりをして議会派を挑発。突撃ラッパ!
    • トマス騎馬隊の突撃が終わった瞬間、ルパートのターン、ゴーリング卿の伏兵が参戦。
      • 右翼崩壊。
      • トマスは単騎で戦場を横断し、左翼のクロムウェルに報告。
      • クロムウェルは六十名の鉄騎兵中隊で右翼を救援。ゴーリング軍潰走。
        • 鉄騎隊強すぎる。(いちおうディヴィッド・レスリーのスコットランド騎兵も救援に参加。)
      • 議会派勝利。
    • ニューカースル卿と弟サー・チャールズ・キャヴェンディッシュはフランスへ亡命。
    • ヨークを攻略して勝利に沸く議会派は、おきまりの党争を始め、そのあとの戦いで敗北。
    • ウィリアムとトマスが会話。
      • Wi「戦争が終わったら、静かで満ちたりた時間をすごせる(大意)」
        • あれ? こういうセリフって、たしか、「おやくそく」の*1……
      • Wi「君は、馬を世話する毎日に戻り、奥さんがナンアップルトンに薔薇を咲かせ(大意)」
        • それ以上、おしゃべりしたら、あんた…
      • Wi「ぼくはスティートンに戻って豚でも飼うかな。君も遊びに来て、豚の背中をかいてやってくれ(大意)」
        • やめてー! ウィリアムの運命点はもうゼロだ!
        • しかも、次の章題が……
  • 第23章 ウィリアム
    • ハックニーのアンのもとへ、トマス負傷の知らせが届く。
      • アンはビショップヒルに向かう。
        • しかし、問題はトマスではないと、読者は分かっている。
      • アンが到着するまで、ウィリアムの妻フランシスが看病してくれている。
        • 役者は揃った。夫と、妻と、親友の妻。一人足りない。
    • ウィリアム死亡の知らせが届く。
  • 第24章 スノードロップの優しさ
    • アンはロンドン、クイーン通りに部屋を借りる。
    • トマスは新型軍の総司令官に任命され、叙任のためロンドンの家にはじめて帰ってくる。
      • ホワイトサリーは退役。「白馬の騎士」は事実上、トマスにさえも伝説となる。
      • クロムウェルは自らの「自己否定法」を無視して、それでもトマスの部下となる。
    • 内輪もめのあいだに、議会派の心を満たしていた「キウィタスデイ」は、手の届かないほど遠ざかってしまった。

『白馬の騎士』上巻の感想

*1:1959年作品でもうこんな紋切り型があったとは