蜀犬 日に吠ゆ

2009-09-20

なんでひとりに

[][][]コナン・ドイル 延原謙訳『ドイル傑作集』3 恐怖編 新潮文庫 15:41 はてなブックマーク - コナン・ドイル 延原謙訳『ドイル傑作集』3 恐怖編 新潮文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 恐怖ものというジャンルは、すこしニガテ(S-N)。読むと怖くて眠れなくなる、とかいうのではなくて単純に何が怖いのか分かりません。人が死んだり、血しぶきが飛び散ったり(splatter)するのは読むのがつらいのですが、それは恐怖ではなくて嫌悪感でしょう。それと恐怖は同じだと言われるとなんともいえませんが。

 ドイル先生の「恐怖もの」は、冒険ものでもあるので、そういう点から読めば面白い。こういうアクション風のなかに恐怖シーンが混じっているのは好きです。「どうしてそこでひとりになるの!」とか、「いっぺん、警察呼ぼうよ!」とかいうたぐいの。

  • 大空の恐怖 The Horror of the Heights
    • ジョイス・アームストロング氏は3万フィートの高みをめざして飛行機を飛ばす。
      • ポール・ヴェロナの単葉機。「ほんとうに何かしようというのには、単葉機ほどすぐれたものはない。これは初期時代すでにボーモンの発見している通りだ。」
      • 「エンジンは十気筒、ローバー回転式で、最大百七十五馬力まで出せる。新しい改良はすべて採用してあった――密閉型胴体、強く曲った着陸用ソリ、ブレーキ、回転式安定器、ヴェネチアン・ブラインド式に翼の仰角を変えることにより三段変速ができる装置など」
    • 目的は、記録への挑戦(だけ)ではなくて怪異(モンスターズ)の究明。
      • 猟銃、酸素袋、防寒具、雲母(タルク)の眼鏡(ゴーグル)を準備して出発。
    • 一度目の遭遇がバインダー式のノートブックに記録される。
      • 四万三千フィート。
        • これは想像以上。科学的にはもちろん出鱈目でしょうが(たとえば生態系が成り立たない)、嘘っぱちのリアリティがあります。上空へ上がっていく描写はすこしだらだらしますが、そうして次第に読者を異世界に引っ張り込むわけですね。
    • 二度目の挑戦が行われる。
      • ノートブックが発見されるのは話の冒頭なので、結果はある程度予測できる仕組みになっています。
        • 恐怖というより冒険ものですね。
  • 革の漏斗 The Leather Funnnel
    • 友人のライオネル・デーカーは怪奇骨董が趣味。
    • 古代の遺品を枕元に於いて寝ると、その物品に込められた怨念を夢に見るという。それを革の漏斗で実験。
      • 革の漏斗は正義を実行する道具。
        • 嫌な話。悪趣味。オールド・ワールド的。
  • 新しい地下墓地 The New Catacomb
    • 友達のビュルガー君とは古代ローマ遺跡発掘のよきライバル。
      • ビュルガー君は最近新しいカタコンベを発見して貴重な財宝を掘りだしている。
        • 前作と似たような設定ですな。
    • 主人公ケネディはその地下墓地を自分にも内緒で教えてくれと頼む。
      • ビュルガー君は、「じゃあ、お前このまえスキャンダルになってたあの娘と、実際どうだったのか教えてくれよ。」
        • 中学生が修学旅行でするような会話。しかしこれでオチは読めてしまいました。「藤子A ブラックユーモア」読者であればよくある話。
      • まあまあとにかく地下墓地へと。
        • ちょっとご都合主義でしょうか。
  • サノクス令夫人 The Case of Lady Sannox
    • ダグラス・ストーンとサノクス令夫人は目下不倫中。
      • サノクス卿の心中やいかに?
        • ……って、もうオチが見えてしまいましたよ。「サラダ満賀」なめんなよ、というか前作と同じオチでいいのでしょうか、新潮文庫の編集は。
  • 青の洞窟の怪 The Terror of Blue John Gap
    • ダービー州のアラートン農場のそばにはムラサキホタル石の採れる鍾乳洞があり、古代ローマ時代の採掘坑が残されています。
      • 最近、洞窟の奥からうなり声が聞こえるようになり、夜中に農場で羊が何ものかに虐殺されます。
        • これが横溝先生だったら横溝先生的展開になるのでしょうけれども、ドイル先生なのでドイル先生的展開になります。
        • ということで、人類は勝てるのか? という冒険ものになるわけ。
        • 「The Horror of -」と「The Terror of -」の違いは正直分かりません。ラテン語源からいうとHorrorは「(恐怖で)毛が逆立つこと」、Terrorは「えるような恐怖」から来ているそうですが、なぜかHorrorには「the horrors」で「(アルコール中毒の)え」という訳があります。
      • シートン氏の謎。「調べてみたがこのシートンなる人物が何ものであるのか、ついに分からなかった。」
        • あの、シートン先生じゃないのでしょうか。どうぶつ記の。シートン先生は19世紀後半から20世紀前半でコナンドイルと活躍の時期が重なりますし。一方はアメリカ、かたやイギリスですが、調べれば分かりそうなものです。わざわざ分からなかったと書くのでしょうから、あのシートン先生ではないということなのでしょうね。
  • ブラジル猫 The Brazilian Cat
    • 名家の出身でありながら借金に追われるマーシャル君は、ブラジルから帰ってきて羽振りのいい従兄弟エヴァラード・キングの誘いでその領地グレイランズを訪ねます。
      • サフォーク州。クリプトン・オン・ザ・マーシュの近く。イプスウィッチから支線に乗り換え。
        • 田舎→ダートムア→まだらの紐
      • エヴァラードはブラジルからいろんな動物を持ち帰って飼っており、なかでも自慢はブラジル猫。
        • 外国帰り→猛獣→まだらの紐
    • エヴァラードの夫人は主人公を追い返そうとします。
    • ブラジル猫は、ジャガーほどもある巨大な肉食獣。
      • 屋敷の離れの特別な部屋に飼われています。
        • ほらやっぱりまだらの紐。