蜀犬 日に吠ゆ

2009-10-11

[][][][]子罕第九を読む(その11) 20:15 はてなブックマーク - 子罕第九を読む(その11) - 蜀犬 日に吠ゆ

子、疾い病す

 子罕第九(206~235)

216 子疾病。子路使門人為臣。病間曰。久矣哉。由之行詐也。無臣而為有臣。吾誰欺。欺天乎。且与其死於臣之手也。無寧死於二三子之手乎。且予縦不得大葬。予死於道路乎。

(訓)子、疾い病す。子路、門人をして臣たらしむ。病い間なるとき曰く、久しいかな、由の詐(いつわり)を行うや。臣なくして臣ありとす。吾、誰をか欺かん。天を欺かんや。且つ予(われ)、其れ臣の手に死なんよりは、無寧(むし)ろ二三子の手に死なん。且つ予、縦い大葬を得ざるも、予、道路にしなんや。

(新)孔子が危篤に陥ったことがあった。子路が自分の門人をやって、下男の仕事をさせた。病気が持ち直した時に孔子が気がついて言った。またもや由は小細工をして人を欺いたな。私は奴隷を持ったことはないのに、奴隷があるらしく見せた。私はそれで世間に対して見栄を張ることができるかも知れぬが、天は本当のことを見抜いておられる。それにこの私は、今の大家がやるように奴隷に遺骸の世話をしてもらうよりは、各々方に死後の始末をしてもらうのが望みだ。それにこの私は、世間並みの立派な葬式は出来なくても、まさか、行きだおれと同じ扱いは受けずに済むだろう。

宮崎市定『現代語訳 論語』岩波現代文庫

 子疾病のとき、子路は動転したことでしょう。

 子路は見栄を張りたがる男です。侠客を自認していたころは自分がどう見られるかを気にしました。孔子に弟子入りし、そうしたことをたしなめられると、今度は教団の評判が気にかかるようになったわけです。


斯に美玉あり

 子罕第九(206~235)

217 子貢曰。有美玉於斯。韞匵而蔵諸。求善賈而沽諸。子曰。沽之哉。沽之哉。我待賈者也。

(訓)子貢曰く、斯(ここ)に美玉あり。匵(ひつ)に韞(おさ)めてこれを蔵せんか。善賈を求めてこれを沽(う)らんか。子曰く、之を沽らんかな。之を沽らんかな。我は賈を待つ者なり。

(新)子貢曰く、美しい玉を持っているとしましょう。箱にいれ鍵かけて、しまっておきましょうか。それとも目の利く商人を探して売りましょうか。子曰く、そうだ、その売るほうだ、売るに限る。私は目の利く商人を待っているのだ。

宮崎市定『現代語訳 論語』岩波現代文庫

 世に孔子が用いられないことをたとえ話でやりあったと解釈するのが普通。こういう高度な会話ができるのが子貢の美点です。