蜀犬 日に吠ゆ

2009-10-22

多目君とのび太君

[][][]ワイス、ヒックマン『ドラゴンランス』1 角川つばさ文庫(その1) 20:55 はてなブックマーク - ワイス、ヒックマン『ドラゴンランス』1 角川つばさ文庫(その1) - 蜀犬 日に吠ゆ

 双書ゼロは無視する私でも、つばさには反応せざるを得ません。

 ただこれ、シリーズ内訳が書いていないので、「戦記」なのか「伝説」なのか、ぜんぶで何巻になるのか全然分かりません。

 ヒーロー達、弱ぇ。さすがD&D。レベルが上がっても「死ににくくなる」のが成長の中心で、別に石壁をこなごなにしたり長剣の一撃でゴブリンの群れを薙ぎ払ったりはできないルールをよく反映しています。結構歴戦の戦士達が、長旅の疲労している時にゴブリンに襲われて大ピンチですからね。「火の玉」で吹っ飛ばしたりできないのがガイギャックス世界。

 それから考えると、「うごく石像」の倍近いヒットポイントやダメージを叩き出すドラ・クエの戦士って、いったいどんなガタイをしているのでしょう……


 正直「D&D」と「AD&D」の区別も付かない私なのでルールやシステムの面からこの小説を読み解くことは不可能なのですが、やはり、独特の魔法観は特筆すべきでしょう。


 呪文を覚えるには、マジックユーザーは十分に休まなければならない。一晩ぐっすり眠れば十分だろう。そこでおもむろに呪文の書を取り出し、使える呪文をじっくり頭に入れるのだ。1時間(例えば)もあればOKだ。これでそのキャラクターは冒険の準備ができ、いつでも覚えた呪文を使える。

Dungeons&Dragons owned by TSR

3 マスターの達人

 D&DでもAD&Dでも、魔法は魔法使いがそれを使用するまえに学習し、覚えるという手順を必要とする。そして魔法は使われると、そのキャラクターがもう一度おなじ魔法を学習して覚えないかぎり、これを使えないのである。数年まえ、ファンタジーゲームにおける魔法は、スペルポイント(魔法点)のシステムを用いたほうがよいという考え方が出てきた。このシステムでは、キャラクターは魔法を使ってもたんにスペルポイントを消費するだけで、自分の持つスペルポイントの限界まで同じ魔法をいくらでも使うことができるのである。D&DやAD&Dはこのシステムを用いていなかったため、時代遅れであるとまでいわれた。このシステムは流行し、魔法使いはまるでマシンガンのように魔法を撃ちまくり、すべてのプレイヤーが魔法使いになりたがった。しかし、こういったキャラクターに何者が対抗できるというのであろうか? そしてほとんど無限に蓄えられたエネルギーを背景にして、即座に魔法を使えばたいていの試煉が切り抜けられるようなゲームなど、それほど面白いだろうか? 残念ながら、私はこのシステムを使う気にはならなかった。私はべつにスペルポイントのシステムを非難するわけではないが、これはD&DやAD&Dの魔法システム、ルール、本質とはそぐわないものなのである。アイデアは確かに機能するだろう。しかし、それには相応の環境が必要なのである。

ゲイリー・ガイギャックス『ロールプレイングゲームの達人』社会思想社
8 自分自身のゲームを作る

3章でも触れた例だが、少し以前にスペルポイントシステムの魔法ルールが流行したことがある。AD&Dはこのシステムを使っていないことによって酷評され、スペルポイントシステムを導入する”独特の”方法がずいぶん寄せられた。そして私がスペルポイントシステムを導入しないと宣言すると、こんどは懐古主義者とか専制者などという非難が寄せられた。しかしこのシステムはルールにうまくあてはまらないだけでなく、キャンペーンを崩壊させるものだったのである。

 AD&Dのシステムは、低いレベルのキャラクターでも強力な魔法が使えるようになっている。そうすることによって、経験が浅いキャラクターでも活躍できるようにしたわけである。ゲームバランスは、キャラクターが使える魔法の数やレベル(威力)を、そのキャラクターのレベルによって制限することによって保たれている。キャラクターのレベルが上がれば、より多く、より強力な魔法が使えるわけである。このシステムでは、魔法使いは冒険のために魔法を”覚え”、それを”持ち運ぶ”ことになる。そしていったんこれを使えば、魔法は消え失せてしまうのである。スペルポイントシステムでは、魔法を一種のエネルギーのかたちで考えている。だれもが”X”ポイントの魔法の力を持っており、魔法を使うとこれを消費するというわけである。このシステムの場合、冒険に出発するまえになにが起きるかを予測して、それに備えて魔法を準備するという要素はなくなるが、エネルギーの考え方をよく活かした魔法とともに用いられ、キャラクターが使える魔法をある程度制限し、他のすべてのルールがこのシステムを活かしたかたちでデザインされていれば、非常にうまくはたらくシステムである。精神力ポイントというのはどうだろうか? 体力ポイントシステムは? この考え方はいろいろ発展するかも知れない。しかし、そのためにはキャラクターメーキングのルールなども、これを活かせるかたちで創らなければならないのである。

 ところで、このAD&Dにスペルポイントシステムを導入した人々は、これがプレイヤーキャラクターに無敵の魔法使いを創らせることになるとわかった時点でこの考え方を放棄し、キャンペーンも、結局昔ながらの”魔法記憶システム”にもとづいて作り直されることになった。最近では、スペルポイントシステムもそれほど話題にはなっていない。このシステムの概念は非常に優秀なものだけに、これは残念なことである。必要なのは、この方法論を活かしたゲームをデザインすることである。自分のルールを創る際にもこれを忘れてはならない。よいロールプレイング・ゲームとは、複雑に絡んだ要素をうまく活かしたものである。ルールの一つ一つの要素がうまくかみあわなければ、これが動くわけもない。

ゲイリー・ガイギャックス『ロールプレイングゲームの達人』社会思想社

 スペルポイントシステムを採ると、『ダブルムーン伝説』や『世界樹の迷宮』のように戦士などが「必殺技ポイント」を消費するようになるのでしょうね。『世界樹の迷宮』などはクエスト解決で全体のストーリィが進む形式なので魔法や装備に制限をかける「魔法記憶システム」や「重量点ルール」などがあると緊張感が増すのではないかと思いますが、コンピュータ・マスタリングですとそれは難しいのかも知れません。

 この「魔法記憶システム」は非常に興味深い(低レベルでも強力な魔法が用意されている、高レベルでも魔法の選択を誤れば魔術師は無力になる)のですが、小説ではどのように表現するのか、そんなところにも注目したいです。