蜀犬 日に吠ゆ

2009-11-12

[][]もうなんか、いろいろひどい~~杉浦茂『イエローマン』エンターブレイン 21:31 はてなブックマーク - もうなんか、いろいろひどい~~杉浦茂『イエローマン』エンターブレイン - 蜀犬 日に吠ゆ

 杉浦茂、晩年の作品集ということで、こんな本が出ていたんですね。

 杉浦茂の、あのひどさというのはたまらないわけですが。

 この『イエローマン』はもっときちんとした意味でひどい。というか漫画として単純につまらない作品もあります。著者88歳の作品であるという『2091年宇宙の旅』に到っては、いわゆる作画崩壊です。

 私としては、あの eccentricな作風は大好きなのですが、それを作者がウリにするかのような、大向こううけを意識したような本作は感心しませんでした。


[][]河田清史『ラーマーヤナ』上 レグルス文庫 第三文明社(その1) 22:32 はてなブックマーク - 河田清史『ラーマーヤナ』上 レグルス文庫 第三文明社(その1) - 蜀犬 日に吠ゆ

 上巻読了。イメージとちょっと違っていました。

ラーマーヤナ―インド古典物語 (上) (レグルス文庫 (1))

ラーマーヤナ―インド古典物語 (上) (レグルス文庫 (1))

 というわけで、その内容は。

  • 一の巻
    • 盗賊 詩人となる
      • 盗賊ラトナーカルは聖者ナーダラにあって回心し、ガンジス河の岸辺で黙想してラーマの物語を霊感で得る。
      • ラトナーカルはバールミキと名を変え、鳥を殺した猟師を呪うことで詩の心を悟り、『ラーマーヤナ』の歌物語りを完成させる。
        • 「このような事件というものは、しばしば偉大な物語りをつくるきっかけとなるのです。」とはいうものの、呪われるためだけに登場した猟師は可哀想でないかい。
        • まあとりあえず、インドの大地がひどいことになっていることは分かりました。「頭が十あって、手が二十本もあるという、あのおそろしい悪魔のラーバナが、ランカ(いまのセイロン島)にあらわれたということじゃ。たいそうつよいやつなので、大かたの神がみをひき捕え、神がみを支配する大神のインドラさえどれいにしてしまったそうじゃ。」善の神を捕らえたり閉じこめたり、というのはたまにありますがしもべにしてしまうというのは、ラーバナさん、さすがすぎます。至上の神ビシヌは、これをどうやって倒すのか。
      • どの神もどの人神も、ひとりとしてラーバナをほろぼすことはできない、なぜならラーバナはあらゆる秘術を知っているから。ビシヌは断言します。しかし、ビシヌ自らが人間に生まれかわることでラーバナを倒すことができる。なぜなら、ラーバナは人間を馬鹿にしているから。また、ビシヌと共に戦う神がみは、おなじようにラーバナが馬鹿にしてる猿に生まれかわることとなる。
      • 神々、猿に下生する。
        • バーリ(大神インドラ)、スグリーパ(太陽の神)、ハニュマーン(風と嵐の神ババーナ)、半猿半熊ジャンバーン(知恵の神)などなど
      • ビシヌ下生。
        • コラサ国の都アヨージャのダサラタ王の長男ラーマがそれである。
          • コーサラ国のアヨドヤというなら分かるのですが、そこのことでしょうか? それともわざとすこし変えた地名なのでしょうか。
        • ラーマの母はこころ正しいカウサルヤー妃。二番目の王子バーラタの母は悪がしこいカイケイー妃、双子の王子ラクシマナとサトルウグナの母は心やさしいスウミトラ妃。
          • バーラタって、『マハーバーラタ』の主人公ですが、よくある名前なのか知らん。
          • ラーマとラクシマナがバディ(buddy-buddy)。バーラタとサトルウグナがもう一組。
    • ラーマの結婚
      • ダサラタ王の宮殿に聖者ビスバーミトラがあらわれ、ラーマとラクシマナに彼のいおりを襲う悪魔(母のタータカと息子のマーリーチャ)を退治するように頼む。
      • 悪魔を倒し、ビスバーミトラから「復しゅうの矢」と「裁判の投げなわ」という極意を授かり、また「運命の槍」「死に神のたいまつ」「ブラーマの神の知恵」「シバの神の投げ槍」「神の風の矢筒」を手に入れ、「星の武器である雨をふらせる術」「月の魔法」なども授かる。
        • いきなり超展開。ラーバナさんのつよさも尋常ではないですが、ラーマもパワーアップ早すぎですね。
      • そのころ、ミシラーのジャナカ王が、王女シータの花婿を選ぶためにシバの神弓ハラダヌを曲げることのできる強者を捜していました。ハラダヌは死に神の弦をはった滅びることのない弓で、ジャナカ王の無双の血族でなければ曲げられないとされていました。
      • ラーマはミシラーでシータにあいます。シータは、下生したビシヌの半分(つまりラーマも半分)だったのでした。
        • 北斗と南だ。
      • ラーマはハラダヌを折り、その力を証明する。
        • てっきりこれも入手して戦いに持っていくのだとおもっていたのでびっくり。
      • ラーマとシータ結婚

[][][][]郷党第十を読む(その10) 20:17 はてなブックマーク - 郷党第十を読む(その10) - 蜀犬 日に吠ゆ

厩火事

 郷党第十(236~253)

247 廐焚。子退朝曰。傷人乎。不問馬。

(訓)廐(うまや)焚(や)けたり。子、朝より退いて曰く、人を傷くるか、と。馬を問わず。

(新)廐が火事でやけた。孔子は勤務から帰ってきて言った。誰も怪我しなかったか、と。馬のことは聞かなかった。

宮崎市定『現代語訳 論語』岩波現代文庫
厩火事

「(略)おまえがそういうから話をするんだが、おまえ唐土(もろこし)を知ってるかい?」

「知ってますとも。お団子でしょ?」

「お団子じゃないよ、支那、中国だよ」

「はァ?」

「ここに孔子という学者があった」

「あァ幸四郎の弟子かなんかですね?」

「役者じゃないよ、学者」

「あァ、がくしゃッってえと、どんなもんなんですゥ?」

「まるでわからない……いまでいう文学博士とでもいう、学問のある偉い方なんだ。そういう方だから、町なかへお住まいンならない、いつでも郡部というようなしずかなところへお住まいなンなってた。昔のことだ、お役所へお勤めンなんのに馬でお通いンなる。二頭の馬があった。一頭のこの白馬(しろうま)のほうを、たいへんに孔子さまが、お愛しンなったんだ」

「あらそうですかねェ、似たような話があるもんですね、うちの亭主(ひと)もたいへんあれが好きなんで、『夏はいけないけど、冬はあれにかぎる、温ったまっていい』って」

「おい濁酒(どぶろく)の話をしてるんじゃあないんだよ、白馬ったって乗る馬だよ」

「ああ乗るお馬なんですか? それがどうしたの?」

「その日に限って孔子さまが、乗り換(が)いの黒馬(あお)の方ン乗ってらした。その留守にお厩から火事が出た。弟子たちは心配をして、ご愛馬の白馬に、怪我でもあってはたいへんと厩へ飛んでいって、どうかしてこの白馬を出そうとおもった。どうして動(いご)くことか、名馬ほど火を怖れる……の譬(たとえ)、だんだんだんだん弟子のほうで、あとへ引きずらいた。命にァ代えらんないから羽目を蹴破って弟子はのがれた。馬は焼け死んでしまった。孔子さまがお帰りてえことんなった。『お帰(かい)り遊ばせ、あやまって厩から火を発しましてございます。ご愛馬の白馬(はくば)が』と言わないうちに孔子さまが、『弟子の者ォ一同怪我はなかったか?』とおっしゃった。『弟子の者ォ一同無事にございます』『そうか、それは重畳であった』って、にこにこ笑ってらして、ほかのことこれっぱかりもおっしゃらない。どうだい、偉い方だろ? そのお弟子はなんとおもう『ああァありがたいご主人だ、この君ゆえには一命を投げうってもつくさなきゃあならない』とおもうだろ? これがお崎さんの前だけど、一事が万事てえやつだ。これにそのの反対をしたはなしがある。(略)」

麻生芳伸『落語百選 秋』ちくま文庫
落語百選 秋 (ちくま文庫)

落語百選 秋 (ちくま文庫)


 蛇足。

「ここに孔子という学者があった」「あァ幸四郎の弟子かなんかですね?」「役者じゃないよ、学者」

 のくだりは、孔子と幸四郎、学者と役者の二重語呂合わせ

 ですが、江戸時代は孔子は「くじ」と発音したので擬古とするとなりたちませんね。このくすぐりは後から足された部分なのかもしれません。