蜀犬 日に吠ゆ

2010-01-27

[][]村上春樹 柴田元幸『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』文春新書 21:15 はてなブックマーク - 村上春樹 柴田元幸『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』文春新書 - 蜀犬 日に吠ゆ

翻訳夜話2 サリンジャー戦記 (文春新書)

翻訳夜話2 サリンジャー戦記 (文春新書)

 とにかく、『ハック・フィン』を読み返すべきかどうか悩まなければならないことが分かりました。

 村上春樹の『キャッチャー』は、多分ミーハー的興味から購入したとは思うのですが、どこにしまってしまったか……

 まあその新訳誕生のエピソードなども楽しかった。

ライ麦畑の翻訳者たち まえがきにかえて

『キャッチャー』の日本語翻訳権(無期限)は白水社が持っていて、ほかのどの日本の出版社も、これを翻訳出版することができないのだ。これくらい昔(一九五一年)に出版された本であれば、複数の出版社から翻訳が出るのが、通常のケースである。たとえばフィッツジェラルドやヘミングウェイやカポーティ、彼らの代表作はみんないくつかの出版社から訳書が出ている。というか、サリンジャー氏の場合だって、『ナイン・ストーリーズ』や『フラニーとズーイ』なんかは、複数の訳書が出ている。ところがこの『キャッチャー』だけは、事情が違うのだ。日本では白水社しかそれを出版することができない。そしてこの白水社からは、野崎孝氏の翻訳(一九六四年出版)が既に出ている。定評のある、歴史的と言ってもいい翻訳である。となると、僕の出る幕はない。

 そんなわけで、「これじゃしょうがないな」とあきらめて、そのまま数年が経過したのだが、ある日、白水社の山本さんという編集者から、「村上さん、我が社のために『キャッチャー』の新訳をやっていただけませんでしょうか?」という話があった。僕としてはまことにありがたい申し出なのだが、そうなると同じ出版社から出ている野崎孝訳を現実的に押しやってしまうことになるかもしれないし、それはこちらとしては望むところではない。だからどうすれば二冊の訳書の共存、棲み分けができるかということについての話し合いが何度かもたれた。でもまあ、なんとかその調整もついて、実際に翻訳作業が開始された。僕もちょうど長編小説(『海辺のカフカ』)の執筆が一段落したところだったので、心おきなく、楽しく翻訳作業に専念することができた。

村上春樹 柴田元幸『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』文春新書

 白水社の意図は奈辺にありや。

対話1 ホールデンはサリンジャーなのか?

柴田 そうすると、この後、第三、第四の『キャッチャー』訳が出てきてもいいわけですね。

村上 もちろん。白水社さえよければ(笑)。ちょっと説明しておきますと、この小説の独占翻訳権は白水社が持っているんです。だから原理的に言えば、白水社はいくつでも翻訳を出せます。しかし他の出版社にはこの本の翻訳は出せません。そのへんの事情は『ナイン・ストーリーズ』とか『フラニーとズーイ』なんかとは違っているんです。白水社の方に聞くと、「気がついたら、たまたまそういう契約になっていたんです。ラッキーでした」とおっしゃっていましたが。

村上春樹 柴田元幸『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』文春新書

 村上さんと白水社の距離が遠い印象。