蜀犬 日に吠ゆ

2010-03-16

ぼくは生きてます

[][][][]這い寄る混沌~~田中芳樹『月蝕島の魔物』理論社 19:45 はてなブックマーク - 這い寄る混沌~~田中芳樹『月蝕島の魔物』理論社 - 蜀犬 日に吠ゆ

 ビクトリア朝怪奇冒険譚!

月蝕島の魔物 (ミステリーYA!)

月蝕島の魔物 (ミステリーYA!)

 英語タイトルは「The Devils of the Eclipsed Island」なのに、本文中でのふりがなは「月蝕島(ルナ・イクリプス・アイランド)」の謎。ミステリ。あと、「The Devils」はちょっと考える間が必要でした。なるほどねえ。


 総じて面白かったのですが、三部作の二、三巻は果たして手にはいるのか? そちらの方が不安。

  1. 氷山に閉じこめられた謎の帆船のこと 生還した兵士が姪と再会をはたすこと
    • この物語は、ネッドが晩年になってからの回顧録という形をとる。
      • 執筆は1907年、事件は1857年。
    • 主人公のネッドがクリミア戦争から帰還し、姪のメープルと逢う。
    • 二人でミューザー良書倶楽部(セレクト・ライブラリー)に就職。
  2. それぞれ悩み多き二大文豪のこと 大詩人の朗読が衝撃を与えること
    • ミューザー社のディケンズ担当となる。ディケンズ宅にはアンデルセンが住みついている。
      • 豪華ゲスト、だと思ったら、この二人も冒険のメンバーなんですよね。すこしビッグネームすぎませんか?
        • もうちょっと、超有名人は仄めくぐらいの登場が好みです。
    • ディケンズが参加する詩の朗読会には、ディズレーリ議員(保守党)とグラッドストーン議員(自由党)が仲良く登場しますし。
      • 1857年時点では、自由党パーマストン内閣。この二人が首相になるのは1868年~1890年代ですか。
    • テニスンの『軽騎兵の突撃』朗読でネッドは戦争の記憶がよみがえり、錯乱する。
  3. 北の国へと旅立つ四人組のこと 街角で芸をする文豪たちのこと
    • ディケンズは北極で行方不明となったフランクリン船長の捜索隊を支援するためスコットランドのアバディーンに向かう。
    • 途中、ディケンズがアルマダ海戦の顛末を語る。
      • 無敵艦隊は海戦よりもその後の逃避行での被害が大きかった。行方不明になった船も多かった。初めて知った。ためになります。
      • タブロイド紙で、月蝕島に氷づけの船が漂着したと知る。
    • カラブー内親王事件の張本人、メアリー・ベイカーと出会う。
      • カラブー事件。ためになる。
        • というか、『紅塵』のときもそうですが、よりみち話が多すぎる。勿論本筋に絡んではくるのですけれども、「いかにも余談」という感じなのが残念です。
  4. 月蝕島の領主登場すること 極北の奇譚が語られること
    • ゴードン大佐登場。
      • ここからはもう、アクション、アクション、アクション!
    • とはいかず、ゴードン大佐とは別れる。
      • しかしゴードン大佐、および次男のクリストル、いい悪役っぷりです。
    • 『北方通信』記者のマクミランの引き合わせで、ノルウェー人学者のレーヴボルグと会う。
      • 十五世紀グリーンランド住民の消失。これは知っていました。しかしホッキョクグマを餌にする悪魔は知らなかった。
    • グリーンランドの怪異と月蝕島の事件に関係があるか、ディケンズは調査を開始する。
  5. 大剣の港に到着すること 海辺にて淑女問答のこと
    • 月蝕島の対岸である「ポート・グレイモア」に到着。
    • クリストルが地元住民を剣で切り刻む。
    • 漁師の船を出させて月蝕島へ。
  6. 怪異の島に上陸すること 謎はまたも謎を呼ぶこと
    • ゴードン大佐の見張りに見つかり、メープルはクリストルに連れ去られ、マクミランは行方をくらまし、その他の一行は塔に閉じこめられる。
      • ああ、もう仕掛けが分かった。
  7. 武勲赫々たるモップのこと 中庭にて激しい攻防のこと
    • メープルの脱出、ネッドの脱出
      • ようやくここから、アクション、アクション、アクション!
    • The Devilsが登場する。
  8. 島を這いまわる恐怖のこと 壁にかかった記念品のこと
    • The Monsterが登場する。
    • 大爆発。
    • 後日談。

[][][][]憲問第十四を読む(その23) 21:41 はてなブックマーク - 憲問第十四を読む(その23) - 蜀犬 日に吠ゆ

子貢、人を方ぶ

 憲問第十四(333~379)

363 子貢方人。子曰。賜也賢乎哉夫。我則不暇。

(訓)子貢、人を方(たくら)ぶ。子曰く、賜や賢なるかな。我は則ち暇(いとま)あらず。

(新)子貢は人物評論がすきだ。子曰く、賜は何時の間にか賢者になってしまったな。私はやろうと思っても、だいいち暇がない。

宮崎市定『現代語訳 論語』岩波現代文庫

 夫子だって批評しますよね。というか、「春秋の筆法」を編み出した総本家ではないですか。しかし、夫子が子貢を諭したのは、一つ、子貢が自分の賢さによって自分の目を眩まされてしまうことをおそれたからでしょう。他人を批評する目をもって自分を見ることができて初めて、人間は成長できます。自分を高めるという日々の精進をしなさい、というアドバイスであったのでしょう。

 もう一つは、人を高めるような評論であるかどうかが重要です。他者の欠点を指摘してあげることは、教育にとって資する所が大きいのですが、物は言いようというか、言い方が良ければ相手を高めるであろう状況であっても、言い方が悪いことで人間関係をもこわしてしまうということは、ありえましょう。ですから夫子は「おまいさんは賢いねえ。」という、子貢を傷つけない言い方で諭したのでしょう。子貢はこの夫子の教えで、一層成長したことでしょう。


 人の悪口をいうのは、暇だから。その思想は儒教にとって重要ですね。なぜなら、ろくでもない行為というのは、暇によって生じることが多いから。「あんないい人が、なぜ犯罪を?」というのはワイドショーの紋切型ですが、「暇だから」というのも多いでしょうね。

大学 第二章

 謂わゆるその意を誠にすとは、自ら欺く毋きなり。悪臭を悪むが如く、好色を好むが如くする、此れを自ら謙(慊)すと謂う。故に君子は必ずその独を慎むなり。

 小人閒居して不善を為し、至らざる所なし。君子を見て、而る后厭然としてその不善を揜いてその善を著す。(然れども)人の己れを視ることその肺肝を見るが如く然れば、則ち何ぞ益せん。故に君子は必ずその独を慎むなり。

 曾子曰わく、「十目の視る所、十手の指さす所、其れ厳なるかな」と。富は屋を潤おし、徳は身を潤おす。心広ければ体も胖なり。此れを中に誠なれば外に形わると謂う。故に君子は必ずその意を誠にす。

金谷治訳注『大学・中庸』岩波文庫