蜀犬 日に吠ゆ

2010-03-20

[][][][]憲問第十四を読む(その27) 19:46 はてなブックマーク - 憲問第十四を読む(その27) - 蜀犬 日に吠ゆ

我れを知る者は、其れ天

 憲問第十四(333~379)

369 子曰。莫我知也夫。子貢曰。何為其莫知子也。子曰。不怨天。不尤人。下学而上達。知我者其天乎。

(訓)子曰く、我を知るもの莫きかな。子貢曰く、何すれぞ其れ子を知る莫からんや。子曰く、天を怨みず、人を尤(とが)めず。下学して上達す。我れを知る者は、其れ天なるか。

(新)子曰く、私を知る者は世にないな。子貢曰く、どうして先生は世に知られないと言えましょう。子曰く、運が向かぬといって天に愚痴をいわず、社会が悪いといって人に責任を転嫁しない。地味な学問を積み重ねて、精神の向上に努めてきた。こういう点を知ってくれるのは、やはり天の外にはないな。

宮崎市定『現代語訳 論語』岩波現代文庫

 最初の子貢との問答は、すでに孔子がひとかどの人物として諸国に知られている、という前提あってのことでしょう。

 後半の、孔子の言葉は、私が知られているというのは、私が知らせたいこととは別であると言うことでしょう。一流は一流を理解する、孔子への評価はいずれも表面的なものにとどまり、本質を見抜くような人物は出てきませんでした。だからといってそれに不満があるわけではない、天が知っていてくださるのだから。ということでしょう。孔子がどれだけ不満をもっていなかったかは、繰り返し出てきたとおりです。

学而第一人を知らざるを患う

里仁第四知らるべき無きを患うるなり

憲問第十四己の能くするなきを患う

衛霊公第十五「君子は能なきことを病う」

学而第一人知らずして慍おらず


「下学而上達」には、諸説があって一定の解釈はない。

加地伸行『論語』講談社学術文庫

 「君子は上達する」とありますが、これは孔子が己の達成した偉業を誇っているのではなくて高い理想をもっていることを、表しているのだと思います。