蜀犬 日に吠ゆ

2010-03-25

[][]無内容~~ジェローム・K・ジェローム『ボートの三人男』中公文庫 20:08 はてなブックマーク - 無内容~~ジェローム・K・ジェローム『ボートの三人男』中公文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 新聞で、新装版が出たことを知る。昔読んだけど、内容を全く覚えていないので、再読。

ボートの三人男 (中公文庫)

ボートの三人男 (中公文庫)

 第七章まで読んだ。覚えていないわけです。内容がないよう。

 関係ないのですが、丸谷才一氏の文庫本だからかしりませんが、ジャケットの意匠を和田誠氏にするというのは、どうなのでせう。和田氏がどうこうではなくて、コネクション的な部分が不透明だと思うのですよね。池田氏の意匠で古い感じはしないので。


 各章題の後に、話の内容も書いてあります。

ボートの三人男 犬は勘定に入れません

第一章

三人の病弱者 ジョージとハリスの悩み 致命的な百七の病気にかかっている男 有効な処方箋 過労が原因、故に休息が必要だということに全員賛成 時化で苦しむ一週間か? ジョージは河を提案する モンモランシーは反対する 三対一の多数によって原案可決


第二章

プランについての議論 晴れた夜のキャンプの「楽しさ」 雨の夜のキャンプの「楽しさ」 妥協案成立 モンモランシーの第一印象 この犬は地上に住むべくあまりにも善良なのではないか、という根拠のない懸念 散会


第三章

プランを練る ハリスの仕事ぶり 家長はどのようにして額を掛けるか ジョージが尤もなことを言う 早朝に水浴びする楽しみ 転覆したときに備えて


第四章

食糧の問題 大気にパラフィン油が充満することへの反対 チーズを道づれにすることの有利性 ある人妻の家出 ふたたび、転覆したときに備えて ぼくが荷造りをする 歯ブラシの意地わる ジョージとハリスが荷造りをする モンモランシーの悪行 眠りにつく

ジェローム『ボートの三人男』中公文庫

 要するに、ボート旅行をしようと決めて、前日に主主人公の家で準備する、というだけ。なのに話はあちこちに飛び回り、時間を無駄にし、犬はいうことをきかない。

 第五章から、いよいよ旅行が始まります。

ボートの三人男 犬は勘定に入れません

第五章

P夫人が起こしてくれる のらくら者のジョージ 天気予報のペテン ぼくたちの荷物 ある少年の悪行 民衆がぼくたちのまわりに集る 威風堂々ウォータールーへ 列車というような俗事については、南西鉄道は関心がない ボートに乗って水の上を


第六章

キングズトン 初期イギリス史についての手引き 彫刻してある樫と生活についての手引き スティヴィングズ少年の悲運 骨董についての瞑想 舵をとっていることを忘れる 興味ふかい結果 ハムトン・コートの迷路 ガイドとしてのハリス


第七章

日曜日の服をまとったテムズ河 河での服装について 男たちにとってのチャンス ハリスにおける趣味の欠如 ジョージのブレザー・コート 最新流行の服を着た若い上流婦人との一日 トマス夫人の墓 墓と棺と髑髏を愛さない男 ハリスの怒り ジョージと銀行とレモネードについてのハリスの意見 彼、芸当を演ずる

ジェローム『ボートの三人男』中公文庫
ボートの三人男 (中公文庫)

ボートの三人男 (中公文庫)


[][][]蛇の章を読む(その43) 21:09 はてなブックマーク - 蛇の章を読む(その43) - 蜀犬 日に吠ゆ

忍耐づよく努力する者は財を得る

第一 蛇の章

一〇、アーラヴァカという神霊

一八七 適宜に事をなし、忍耐づよく努力する者は財を得る。

  誠実をつくして

  名声を得、

  何ものかを与えて交友を結ぶ。

一八八 信仰あり在家の生活を営む人に、誠実、真理、堅固、施与というこれらの四種の徳があれば、かれは来世に至って憂えることがない。

一八九 もしもこの世に誠実、自制、施与、耐え忍びよりもさらに勝れたものがあるならば、さあ、それら他のものをも広く(道の人)、バラモンどもに問え。

中村元『ブッダのことば』岩波文庫

 註。

一八七 適宜に事を為す―― patirupakari とは、場所、時間などを逸することなく、世間的なあるいは超世俗的な財を、適宜に得させる手段を講ずることである(略)。

 財を得る――だからここで「財を得る」というのは、宗教的な財でもよいし、世俗的な財でもよく、両者にかかわるのである。

中村元『ブッダのことば』岩波文庫

 世俗的な財を得るためであれば、普通仏教には志さないとおもいますが、我利我利亡者を肯定するのでしょうか。

 何ものかを与えて交友を結ぶ――註釈家によると、四摂事によって友人をつくるという意味であるとも解し得るという。

中村元『ブッダのことば』岩波文庫

 兼好法師も、「友達にするならものをくれる人」と言っている位ですから、友達になるためにプレゼントを繰り返す、いわゆる「バラマキ政策」でいいのではないでしょうか。

真理――原語は dhamma. ここでそれが何を意味するのか、よく解らない。註は第一八六詩の「教えを聞こうとする熱望によって智慧を得る」ことを言うのだと解する。しかしどうも適合しない。

中村元『ブッダのことば』岩波文庫

一八九 ここに数え立てられている徳目は叙事詩にも出ている(Vedasyopanisat : satyam satyasyopanisad damah | damasvopanisan moksa etat sarvanusasanam || MBh. ⅩⅡ, 12, 16; ⅩⅡ, 299, 13)。遡るとウパニシャドのうちに説かれている。

中村元『ブッダのことば』岩波文庫


[][][][]衛霊公第十五を読む(その1) 17:26 はてなブックマーク - 衛霊公第十五を読む(その1) - 蜀犬 日に吠ゆ

君子固より窮す

 衛霊公第十五(380~420)

380 衛霊公問陳於孔子。孔子対曰。俎豆之事。則嘗聞之矣。軍旅之事。未之学也。明日遂行。在陳絶糧。従者病。莫能興。子路慍見曰。君子亦有窮乎。子曰。君子固窮。小人窮斯濫矣。

(訓)衛の霊公、陳を孔子に問う。孔子対えて曰く、俎豆の事は則ち嘗てこれを聞けり。軍旅のことは未だ学ばざるなり、と。明日遂に行(さ)る。陳にありて糧を絶つ。従者病み、能く興(た)つことなし。子路慍(いか)り見(まみ)えて曰く、君子も亦た窮するあるか。子曰く、君子固より窮す。小人は窮すれば斯に濫す。

(新)衛の霊公が戦術のことを孔子に尋ねた。孔子対えて曰く、文化に関したことは少しは勉強してみました。しかし戦争のことは学ぼうともしませんでした、と。その明日、前から考えていたように決心して立ち退いた。陳にきたとき食糧がつきてしまい、門人の従う者は病んで立上がれない者もあった。子路が腹を立て孔子に面と向って言った。徳のある君子もこんなに落ちぶれるものでしょうか。子曰く、君子だって落ちぶれるさ。ただ小人のように取りみだすことがないだけだ。

宮崎市定『現代語訳 論語』岩波現代文庫

 おばけなんてないさ。空だってとべるさ。君子だって落ちぶれるさ。

 それはとにかく、同じ章の中で、「問陳」は「陣」に通じさせて、「在陳」は地名であるというのは、つまりどちらもイレギュラーな用字であるわけで、私の趣味に合いません。金谷先生や吉川先生の本は「衛霊公問う」と「陳に在(いま)して」の二句に分けますが、それでもいいと思います。


 孔子もしかし厳しいですね。亜聖孟子などは「王様は戦争がお好きなようですが、ひとつ戦争を例にとりましょう」(梁恵王上)くらいのいなしをしたものですが。もちろん、夫子と衛霊公はすでに何度かにわたって議論を重ね、それがことごとく伝わらなかった、絶望の内に捨て台詞をのこして衛の国を立ち去った、と言うことなのでしょうけれども、「軍旅のことは知りません!」て。足食足兵を実現するのも君子の行いなのですから、そういう方面から話をしてもよかったのではないでしょうか。しかしやはり、そんなはなしを出来るような霊公ではなかったのでしょうね。


 後半の「陳蔡の難」あたりは、孔子の事蹟の中でもクライマックスにちかい事件ですね。

 陳とはいまの河南省陳州を首都とする小国である。衛、すなわち河南省の淇県を首都とするくにを立ち去った孔子は、黄河を渡って東南にゆき、山東省定陶県を首都とする小国曹に行ったが、曹が受けつけないので、さらに西南し、河南省商邱県を首都とする宋へ行き、そこで子罕第九に見える匡の法難、さらに西南して陳国の領土へ入ったところ、あたかも陳は、呉の侵略を受けて飢饉であったため、食糧を絶たねばならなかった。以上を、古注に引く孔安国は、「陳に在りて糧を絶つ」の説明とする。

宮崎市定『現代語訳 論語』岩波現代文庫

「史記」の説明はちがい、南方の大国の楚が、孔子を招聘しようとする意向があるのを、陳および同様に小国である蔡が聞き知り、孔子の任用によって楚がさらに強大となることをおそれ、孔子の楚への旅行を阻止するため、軍隊を出して包囲した。そのために食糧を絶ったのだとする。

宮崎市定『現代語訳 論語』岩波現代文庫

 しかし、孔子は慌てず騒がず、琴を弾いていたので子路が矛をとって舞う。中島敦『弟子』では印象的なシーンですが、子路、躍ってませんね。また後で出てくるのでしょうか。