蜀犬 日に吠ゆ

2010-05-29

[][][]古今和歌集を読む 仮名序(その7) 17:15 はてなブックマーク - 古今和歌集を読む 仮名序(その7) - 蜀犬 日に吠ゆ

 古今集仮名序

仮名序

 それ、まくらことは、春の花にほひすくなくして、空しき名のみ秋の夜の長きをかこてれば、かつは人の耳に恐り、かつは歌の心に恥ぢ思へど、たなびく雲のたちゐ、鳴く鹿の起きふしは、貫之らがこの世に同じくむまれて、この事の時にあへるをなむ、喜びぬる。人麿なくなりにたれど、歌のこととゞまれるかな。たとひ、時移り事去り、楽しび哀しびゆきかふとも、この歌の文字あるをや。青柳の糸絶えず、松の葉のちり失せずして、まさきのかづら長く伝はり、鳥のあと久しくとゞまれらば、歌のさまを知り、ことの心を得たらん人は、大空の月を見るがごとくに、いにしへを仰ぎて今を恋ひざらめかも。

佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫