蜀犬 日に吠ゆ

2010-06-01

[][][]葛覃(葛延びて)『周南』を読む(その3) 20:32 はてなブックマーク - 葛覃(葛延びて)『周南』を読む(その3) - 蜀犬 日に吠ゆ

 周南、第三歌。

卷耳(みみ菜草)

1

采采卷耳

不盈頃筐 khiuang

嗟我懐人

寘彼周行 heang


卷耳を采り采るも

頃筐に盈(み)たず

嗟(ああ) 我人を懐(おも)うて

彼の周行に寘(お)く


みみ菜草 摘み摘むも

かたまにも盈たずけり

かのひとを 思ひなづみて

道の邊に そをおきにけり


2

陟彼崔嵬 nguei

我馬虺隤 duei

我姑酌彼金罍 luei

維以永懐 hoei


彼の崔嵬に陟(のぼ)れば

我が馬 虺隤(くわいたい)たり

我姑(しばら)く彼の金罍(らい)に酌みて

ここを以て永く懐はざらん


岩山に のぼらへば

わが馬は 色あせぬ

いささかに 酒酌みて

いとしばし 思ひ忘れむ


3

陟彼高岡 kang

我馬玄黄 huang

我姑酌彼兕觥 koang

維以不永傷 sjiang


彼の高岡に陟れば

我が馬 玄黄たり

我姑く彼の兕觥(じくわう)に酌みて

ここを以て永く傷まざらん


高山に のぼらへば

わが馬は 色失せぬ

いささかに 酒酌みて

いとしばし やすらはむ


4

陟彼砠矣 tsia

我馬瘏矣 da

我僕痡矣 phiua

云何吁矣 xiua


彼の砠(やまそば)に陟れば

我が馬瘏(や)みぬ

我が僕痡(や)みぬ

ああ何ぞ吁(うれ)はしき


岩山に のぼりたり

わが馬は なやみたり

わたしもべ たゆたひぬ

なぞかくも うれはしき

白川静『詩経国風』東洋文庫

 坊ちゃんの失恋旅行につき合わされる馬と僕が可哀想。とか思ったら、恋愛成就の願掛けが主題である由。

主題

 登高望郷の歌。1の草摘みは、魂振りの民俗を歌う。魂振りとしての草摘みの歌は、日を限り、場所を定め、神と約束をして、そのかねごとを成就したときに、願い事は成就されるとした。

白川静『詩経国風』東洋文庫

 白川先生の説明にもありますが、これは日本にもあった習俗であるそうです。たとえば百人一首の「君がため春の野に出でて若菜摘む わが衣手に雪はふりつつ」とか(白川先生の引用は万葉集ですけど)。

 で、2以下は登高望郷であるそうで、別に失恋とかそういうわけではないようです。1での思い人がすなわち妻であり、山から見わたして、故郷の家を思うと。

詩経国風 (東洋文庫)

詩経国風 (東洋文庫)