2010-07-10
■ [書留][国文][春歌]古今和歌集を読む 春歌上(その12) 
春歌上
題しらず 在原行平朝臣
23 春のきる霞の衣、 ぬきをうすみ 山かぜにこそみだるべらなれ
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
23 一二春を人間扱いにした言い方。 三横糸が薄いので
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
山の霞を衣に見立てて、着衣がかぜに乱れる様子。
春歌上
寛平の御時きさいの宮の歌合によめる 源むねゆきの朝臣
24 ときはなる松のみどりも 春くれば今ひとしほの色まさりけり
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
24 寛平→一二。 一二一年中色が変らない松の葉の緑色でも。 四五もう一度染汁につけただけの色がこくなったことだ。
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
なんでもう一度染汁に付けた話が出て来るのかは謎。普通に考えると色の対比効果というか、春になって落葉樹が新芽をふいて、森の全体の色が変わってきたのを見ると、変わっていないはずの松もなんだかみずみずしく映えて見える、ということだと思うのですが。
春歌上
歌たてまつれと仰せられし時、よみてたてまつうれる つらゆき
25 わがせこが衣はるさめふるごとに 野辺のみどりぞ色まさりける
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
25 一二わがせこの衣を洗って張る、という意で言いかけて、春雨を出した。以下は、一雨ごとに野べの草葉の緑が濃くなっていくことに気付いた趣きをいう。
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
「洗い張る」のはると「はるさめ」のはるが縁語となって雨降りの野原の景色に主題が転換。即興の歌はこうして作られ、こうした当意即妙(esprit)の蓄積が、枕詞や序詞を作っていくのでしょうか。
春歌上
26 あをやぎの糸よりかくる春しもぞ みだれて花のほころびにける
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
26 一二風にゆれている柳の細い枝を、青柳が糸をよって身にかけていると見た。 四五花が乱れ咲く意を「ほころぶ」で表したのは、糸はほころびを縫うものとして縁をもたせた。
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
また縁語。
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