2010-08-11
■ [筆記][児童文学][アメリカ]マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』上 岩波文庫 を読む。(その1) 
本棚をさらうシリーズ。
まずは訳者による舞台の解説から。
はしがき
この物語はだいたいにおいて、作者自身の少年時代の経験をもとに書かれたものと考えられる。ハックの育った町セント・ピーターズバーグは、マーク・トウェインが四歳から十八歳のころまで住んでいたミズーリ州ハニバルであろう。アメリカの地図をひろげてみると、ほぼ中央を南北にミシシッピー川が流れていて、その中ほどにセント・ルイスという大都会が目につくが、ハニバルはそこから百五十キロばかり川をさかのぼったところにある。
マーク・トウェインは一八三五年生まれだから、ハニバルで少年時代を過ごしたのは一八四〇年代から五〇年代にかけて、日本ではそろそろ幕末のさわがしい時期にさしかかるころである。
ミズーリ州は、南北の勢力争いの妥協のために、一八二一年に奴隷制度を認める州として誕生した。その後、南北の対立は次第にはげしくなって、やがて南北戦争という形で決裂する。しかし、マーク・トウェインの少年時代のいなか町では、そんな険悪な空気はほとんど感じられなかったらしい。少なくとも作者の少年時代の記憶には強く残っていないようである。
マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』上 岩波文庫

- 作者: マークトウェイン,Mark Twain,西田実
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1977/08/16
- メディア: 文庫
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■ [書留][国文][秋歌]古今和歌集を読む 秋歌上(その2) 
秋歌上
題しらず よみ人しらず
171 わがせこが衣のすそを吹き返し うらめづらしき秋のはつかぜ
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
171 一~三「わがせこ」が着ている服のすそを吹き返して。裏が見える意で、第四句の「うら」の音を引き出す。「わがせこ」は男性を親しんで呼ぶことば。 四心ひかれる。吹きそめた秋風のさわやかさに感じたわけ。
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
おそらく「わがせこ」とは現在遠く隔たった所にいるのでしょうね。秋風のさわやかさを受けて心に感じるものがあり、衣を風にはためかせている人のことを思い出したのでしょう。
秋歌上
172 昨日こそ早苗とりしか いつのまに 稲葉そよぎて秋風のふく
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
172 一二つい昨日田植えをしたばかりだが。実際には月日がたっているわけだが、昨日の事のように感じている。 四後世なら「稲葉そよがせ」というところ。
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
おじいちゃんついにぼけたか……という話ではなくてなんでも大げさに言うのが古今流。
秋歌上
173 秋風の吹きにし日より 久方のあまのかはらにたゝぬ日はなし
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
173 七月七日を待つ織女の気持。 一二立秋の日から。 三枕詞。 四天の川の河原。
佐伯梅友校注『古今和歌集』岩波文庫
立秋は太陽暦なので七月一日とはずれるんですよね。たしか。
春秋時代、暦は周王によって作製され、諸侯に下賜されました。江戸時代の日本で言えば伊勢暦を売り歩く御師(おし)や……
まあその話はともかく、織女はこと座ヴェガにいるのですから当然普段は地球(terra)とはことなるカレンダーで過ごしていることでしょう。一体誰が、25光年も離れた所まで暦を売りに行くのか、あと織女がヴェガ太陽系のどういう惑星だか衛星だかアステロイドに暮らしているのか分かりませんが、terra の立秋が到来すると、そっちも秋風吹くのでしょうか。
謎が謎を呼び、風が嵐を呼ぶのでした。