蜀犬 日に吠ゆ

2010-09-18

[][]岡田英弘『日本史の誕生』ちくま文庫 17:24 はてなブックマーク - 岡田英弘『日本史の誕生』ちくま文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 岡田氏の、邪馬台国あたりから日本書紀成立あたりの論考をまとめた文庫本。1970年代頃でしょうか、なんべんも同じことを、あちこちで繰り返し発表していたのですねえ。

 また最近奈良県桜井市の「纒向(まきむく)遺跡」発掘あたりから「歴史ロマン」が吹きおこっていますが、岡田氏の努力は実らなかったのです。

 結論から言うと、

  • 「邪馬台国」は瀬戸内。『魏書』「烏丸鮮卑東夷伝」(所謂「魏志倭人伝」)の旅程は捏造。
  • 古事記は偽書。成立は平安初期。
  • 日本書紀は皇統を河内王朝(仁徳~清寧七代)・播磨王朝(顕宗~武烈三代)・越前王朝(継体~孝徳までで十一代、次が天智)で説明しますが、晋書「倭の五王」と対応する河内王朝の五人以外は実在が確認できない。
  • 天智以前の「倭」は「日本」と一致しない。
  • 白村江の戦いで敗れた「倭」が周辺地域と連合して「日本」が成立し、その正統性を表明するため「日本書紀」が編纂された。

 ということですね。妥当な見解だと思いますが、あんまり他の人に参照されていない印象もあります。

 西嶋定男「騎馬民族征服説」が、朝鮮戦争で人民軍がおしよせてくるイメージと重なることで人気を博した、など当時の時代状況から説き起こす小咄も面白い。そして騎馬民族説は新しい神話となってしまったとか。

 「邪馬台国」だの天皇家の「歴史的考察」などという話が湧いて出るのは、敗戦のショックから自尊心を取り戻したい気持ちや、言論の自由が実感されたということと結びついているのかもしれません。となれば、人びとは「事実に基づく歴史」よりも「正しい歴史」を求めてしまう。それは7世紀でも、20世紀でも同じことであったのでしょう。

日本史の誕生―千三百年前の外圧が日本を作った (ちくま文庫)

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