蜀犬 日に吠ゆ

2010-09-19

[][][]孫子を読む 計篇(その1) 22:34 はてなブックマーク - 孫子を読む 計篇(その1) - 蜀犬 日に吠ゆ

兵は国の大事

計篇

孫子曰、兵者國之大事、死生之地、存亡之道、不可不察也、故經之以五事、校之以計、而索其情、一曰道、二曰天、三曰地、四曰將、五曰法、道者令民與上同意也、故可以與之死、可以與之生、而不畏危、天者陰陽寒暑時制也、地者遠近險易廣狹死生也、將者智信仁勇嚴也、法者曲制官道主用也、凡此五者、將莫不聞、知之者勝、不知者不勝、故校之以計、而索其情、曰主孰有道、將孰有能、天地孰得、法令孰行、兵衆孰強、士卒孰練、賞罰孰明、吾以此知勝負矣、

金谷治訳注『孫子』 岩波文庫

 孫子曰わく、兵とは国家の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。故にこれを経(はか)るに五事を以てし、其の情を索(もと)む。一に曰わく道、二に曰わく天、三に曰わく地、四に曰わく将、五に曰わく法なり。道とは、民をして上と意を同じうし、これと死すべくこれと生くべくして、危(うたが)わざらじむるなり。天とは、陰陽・寒暑・時制なり。地とは遠近・険易・広狭・死生なり。将とは、智・信・仁・勇・厳なり。法とは、曲制・官道・主用なり。凡そ此の五者は、将は聞かざること莫きも、これを知る者は勝ち、知らざる者は勝たず。故にこれを校(くら)ぶるに計を以てして、其の情を索む。曰わく、主 孰れか有道なる、将 孰れか有能なる、天地 孰れか得たる、法令 孰れか行なわる、兵衆 孰れか強き、士卒 孰れか練(なら)いたる、賞罰 孰れか明らかなると。吾れ此れを以て勝負を知る。


 孫子はいう。戦争とは国家の大事である。(国民の)死活がきまるところで、(国家の)存亡のわかれ道であるから、よくよく熟慮せねばならぬ。それゆえ、五つの事がらではかり考え、(七つの)目算で比べあわせて、その場の実情を求めるのである。(五つの事というのは、)第一は道、第二は天、第三は地、第四は将、第五は法である。(第一の)道とは、人民たちが上の人と同じ心になって、死生をともにして疑わないようにさせる(政治の)ことである。(第二の)天とは、陰陽や気温や時節(などの自然界のめぐり)のことである。(第三の)地とは、距離や険しさや広さや高低(などの土地の状況)のことである。(第四の)将とは、才智や誠信や仁慈や勇敢や威厳(といった将軍の人材)のことである。(第五の)法とは、軍隊編成の法規や官職の治め方や主軍の用度(などの軍制)のことである。およそこれら五つの事は、将軍たる者はだれでも知っているが、それを深く理解している者は勝ち、深く理解していない者は勝てない。それゆえ、(深い理解を得た者は、七つの)目算で比べあわせてその場の実情を求めるのである。すなわち、君主は(敵と身方とで)いずれが人心を得ているか、将軍は(敵と身方とで)いずれが有能であるか、自然界のめぐりと土地の情況とはいずれに有利であるか、法令はどちらが厳守されているか、軍隊はどちらが強いか、士卒はどちらがよく訓練されているか、賞罰はどちらが公明に行われているかということで、わたしは、これらのことによって、(戦わずにしてすでに)勝敗を知るのである。

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孫子 (1963年) (岩波文庫)

孫子 (1963年) (岩波文庫)