蜀犬 日に吠ゆ

2010-09-23

[][][]孫子を読む 作戰篇(その1) 19:43 はてなブックマーク - 孫子を読む 作戰篇(その1) - 蜀犬 日に吠ゆ

兵は拙速なるを聞くも、未だ巧久しいなるを賭ざるなり

作戰篇

孫子曰、凡用兵之法、馳車千駟、革車千乗、帶甲十萬、千里饋糧、則内外之費、賓客之用、膠漆之材、車甲之奉、日費千金、然後十萬之師擧矣、其用戰也、勝久則鈍兵挫鋭、攻城則力屈、久暴師則國用不足、夫鈍兵挫鋭、屈力殫貨、則諸侯乗其弊而起、雖有善其後矣、故兵聞拙速、未賭巧之久也、夫兵久而國利者、未之有也、故不盡知用兵之害者、則不能盡知用兵之利也、

金谷治訳注『孫子』 岩波文庫

 孫子曰わく、凡そ用兵の法は、馳車千駟・革車千乗・帯甲十万、千里にして糧を饋(おく)るときは、則ち内外の費・賓客の用・膠漆の材・車甲の奉、日に千金を費して、然る後に十万の師挙がる。其の戦いを用なうや久しければ、則ち兵を鈍(つか)らせ鋭を挫く。城を攻むれば則ち力屈(つ)き、久しく師を暴(さら)さば則ち国用足らず。夫れ兵を鈍らせ鋭を挫き、力を屈くし貨を殫(つ)くすときは、則ち諸侯の弊に乗じて起こる。智者ありと雖も、其の後を善くすること能わず。故に兵は拙速なるを聞くも、未だ巧久しいなるを賭(み)ざるなり。夫れ兵久しくして国の利する者は、未だこれ有らざるなり。故に尽〃く用兵の害を知らざる者は、則ち尽〃く用兵の利をも知ること能わざるなり。


 孫子はいう。およそ戦争の原則としては、戦車千台、輜重車千台、武具をつけた兵士十万で、千里の外に食糧を運搬するというばあいには、内外の経費、外交上の費用、にかわやうるしなどの(武具の)材料、戦車や甲冑の供給などで、一日に千金をも費やしてはじめて十万の軍隊を動かせるものである。(従って、)そうした戦いをして長びくということでは、軍を疲弊させ鋭気をくじくことになって、(それで)敵の城に攻めかければ、戦力も尽きて無くなり、(だからといって)長いあいだ軍隊を露営させておけば国家の経済が窮乏する。もし軍も疲弊し鋭気もくじかれて(やがて)力も尽き財貨も無くなったということであれば、(外国の)諸侯たちはその困窮につけこんで襲いかかり、たとい(身方に)智謀の人がいても、とても(それを防いで)うまくあとしまつをすることはできない。だから、戦争には拙速――まずくともすばやくやる――というのはあるが、巧久――うまくて長びく――という例はまだ無い。そもそも戦争が長びいて国家に利益があるというのは、あったためしがないのだ。だから、戦争の損害を十分知りつくしていない者には、戦争の利益も十分知りつくすことはできないのである。

金谷治訳注『孫子』 岩波文庫

 だから、勝ち続けていても戦いが長びけば負けているも同然。負けそうでもさっさと手を引くことが、負けない要諦、ということになるんですね。

孫子 (1963年) (岩波文庫)

孫子 (1963年) (岩波文庫)