蜀犬 日に吠ゆ

2010-09-24

[][][]孫子を読む 作戰篇(その2) 19:30 はてなブックマーク - 孫子を読む 作戰篇(その2) - 蜀犬 日に吠ゆ

兵は

作戰篇

善用兵者、役不再籍、糧不三載、取用於國、因糧於敵、故軍食可足也、國之貧於師者遠輸、遠輸則百姓貧、近於師者貴賣、貴賣則百姓財竭、財竭則急於丘役、力屈財殫中原、内虛於家、百姓之費、十去其七、公家之費、破車罷馬、甲冑矢弩、戟楯蔽櫓、丘牛大車、十去其六、故智將務食於敵、食敵一鍾、當吾二十鍾、芑心秆一石、當吾二十石

金谷治訳注『孫子』 岩波文庫

 「芑心」はこれで一字。読みは「き」で、豆がらの意。

 善く兵を用うる者は、役は再びは籍せず、糧は三たびは載せず。用を国に取り、糧を敵に因る。故に軍食足るべきなり。国の師に貧なるは、遠師にして遠く輸(いた)せばなり。遠師にして遠く輸さば則ち百姓貧し。近師なるときは貴売すればなり。貴売すれば則ち百姓は財竭(つ)く。財竭くれば則ち丘役に急にして、力は中原に屈(つ)き用は家に虚しく、百姓の費、十に其の七を去る。公家(こうか)の費、破車罷馬、甲冑弓矢、戟楯矛櫓、丘牛大車、十に其の六を去る。故に智将は務めて敵に食む。敵の一鍾を食むは、吾が二十鍾に当たり、芑心秆(きかん)一石は、吾が二十石に当たる。


 戦争の上手な人は、(国民)の兵役は二度と挑発せず、食糧は三度と(国からは)運ばず、軍需品は自分の国のを使うけれども、食糧は敵地のものに依存する。だから、兵糧は十分なのである。国家が軍隊のために貧しくなるというのは、遠征して遠くに食糧を運ぶからのことで、遠征して遠くに運べば民衆は貧しくなる。(また)近くでの戦争なら物価が高くなるからで、物価が高くなれば民衆の蓄えは無くなる。(民衆の)蓄えが無くなれば村から供給する軍役にも苦しむことになり、戦場では戦力は尽きて無くなり、国内の家々では財物がとぼしくなりで、民衆の経費は十のうち七までが減らされる。公家(おかみ)の経費も、戦車がこわれ馬はつかれ、よろいかぶとや弓矢や戟(刃の分かれたほこ)や楯や矛や櫓(おおだて)や、(運搬のための)大牛や大車などの入用で、十のうちの六までを失うことになる。だから、智将は(遠征したら)できるだけ敵の食糧を奪って食べるようにする。敵の一鍾を食べるのは身方の二十一鍾に相当し、豆がらやわら(の馬糧)一石は身方の二十石分に相当するのである。

金谷治訳注『孫子』 岩波文庫

 戦闘よりも兵站を重要視するのは、兵の死因の多くが餓死や伝染病であるためでしょう。あとは破傷風とか。兵站が成り立たなければ、そもそも戦線が維持できないので戦争どころではなくなるわけです。

 ナポレオンは智将と呼んで差し支えないでしょうけれども、ロシア遠征では敵の食糧を奪うのに失敗して敗北しました。孫子なら、燃えるモスクワを見てどうしたでしょうね。

孫子 (1963年) (岩波文庫)

孫子 (1963年) (岩波文庫)