蜀犬 日に吠ゆ

2010-10-13

[][]和田誠『装丁物語』白水Uブックス 19:52 はてなブックマーク - 和田誠『装丁物語』白水Uブックス - 蜀犬 日に吠ゆ

 和田誠さんに違和感があります。イラストレイターとして著名なこと、挿絵や装丁の作品にすぐれたものが多いことは承知しているのですが、つい、「なんで和田誠なんだろう? 真鍋さんじゃなにがいけないんだろう」とか思ってしまうのです。

 「きまぐれ星のメモ」「地球からきた男」など、角川文庫で見かけるぶんには、まあそういうこともあるだろうと思っていたのですが、新潮文庫で見るとね、なんとも。「ほらふき男爵現代の冒険」とかね。いや、カヴァーイラストも、中の挿絵も、すごくいいんですよ。でも……

 という疑問が、解決。

装丁物語 (白水uブックス)

装丁物語 (白水uブックス)

 今あげたタイトルの中で、『ごたごた気流』『きまぐれ博物誌』は星新一さんの本です。星さんの本の装丁も割合多くて、ある種コンビ的な部分もあります。星さんとのコンビというと、本当は真鍋博さんですけど。

 昔「ディズニーの国」という雑誌があって、ディズニー・プロとタイアップでディズニー漫画を中心に載せていたんだけど、編集長が児童文学の今江祥智さんだったので、輸入ものばかりじゃ面白くないとオリジナルの部分も充実させていたんです。岡本喜八監督に映画の話を書いてもらったり。今江さんの依頼でその雑誌に星さんは初めて児童向けのショートショートを書いた。ぼくが挿絵を描きました。それがきっかけで、ぼくは星さんに、ぼくの自費出版絵本のためのオリジナル・ショートショートをお願いしたんです。六四年の話。その時が初対面でそれからのおつきあいなんですが、そのあたりから星さんも意識して子ども向けのショートショートを書くようになりました。そっち方面の挿絵はぼくが依頼される。大人向きのショートショートはそれ以前からずっと真鍋さんが担当してる、とそんな感じ。

和田誠『装丁物語』白水Uブックス

 ということは、むしろ和田氏は星さんの芸風を広げるきっかけをつくったともいえるわけで、そういう意味では違和感を感じるどころではなくてむしろ恩人なのでした。内心ケチをつけたりしてたいへん申し訳ありませんでした。


[][][]孫子を読む 勢篇(その6) 16:33 はてなブックマーク - 孫子を読む 勢篇(その6) - 蜀犬 日に吠ゆ

勢に求めて人に責めず

勢篇

故善戰者、求之於勢、不責於人、故能擇人而任勢、任勢者、其戰人也、如轉木石、木石之性、安則靜、危則動、方則止、圓則行、故善戰人之勢、如轉圓石於千仞之山者、勢也、

金谷治訳注『孫子』 岩波文庫

 故に善く戦う者は、これを勢に求めて人に責(もと)めず、故に善く人を択びて勢に任ぜしむ。勢に任ずる者は、其の人を戦わしむるや木石を転ずるが如し。木石の性は、安ければ則ち静かに、危うければ則ち動き、方なれば則ち止まり、円なれば則ち行く。故に善く人を戦わしむるの勢い、円石を千仞の山に転ずるが如くなる者は、勢なり。


 そこで、戦いに巧みな人は、戦いの勢いによって勝利を得ようとして、人材に頼ろうとはしない。だから、うまく(種々の長所を備えた)人々を選び出して、勢いのままにさせることができるのである。勢いのままにまかせる人が兵士を戦わせるありさまは、木や石をころがすようなものである。木や石の性質は、(平坦な処に)安置しておけば静かであるが傾斜した処では動き出し、方形であればじっとしているが、丸ければ走り出す。そこで、巧みに兵士を戦わせたその勢いが、千仞の高い山から丸い石をころがしたほどになるのが、戦いの勢いというものである。

金谷治訳注『孫子』 岩波文庫

魏武注                   

勢篇

曹操 総合的な組織力を引き出す術策をもった人物ならば、將軍として指揮権をまかせてよろしい。將軍は、武士である以上に組織指導者の資質と責任が要求されるからである。一人や二人の勇猛の士の個人技に決して頼らないというのは、臨機応変の全面的な戦術変更を優先する場合、自分の個人技を主張したがる武士たちは作戦上の撤退を拒否したり、かえって指揮の妨げになるからである。

中島悟史『曹操注解 孫子の兵法』朝日文庫

 曹操が美髯公にご執心で、劉備軍二枚看板の燕人トラヒゲには興味をもたないのは、こういう事情もあるのでしょうか。

 しかし、「勇猛の士の個人技」というのは士卒に大きな影響力を与え、指揮能力を大きく左右します。野球選手が、ホームラン王の監督のいうことであれば素直に聞くようなものですね。それでなくても山本五十六元帥の「やってみせ…」のように、兵を動かすということは理窟ではないものですからね。(上杉鷹山でしたっけ?)


 「千仞の山」は「万丈の山」とどっちが高いのか、と気になるのは「箱根八里」のせいですね。