蜀犬 日に吠ゆ

2011-01-04

負の遺産

[][][]コロコロ命名法~~J君『なんだ!? このマンガは!?』彩図社(その2) 21:23 はてなブックマーク - コロコロ命名法~~J君『なんだ!? このマンガは!?』彩図社(その2) - 蜀犬 日に吠ゆ

 漫画のキャラクターの名前。

なんだ!?このマンガは!?

なんだ!?このマンガは!?

釣りバカ大将

 「釣りバカ大将」の作者は桜多吾作先生。先生はなんと、かの永井豪とダイナミックプロ所属でいらっしゃるとのことで、モミアゲや極太眉毛などで作品中暑苦しいまでの男臭さを表現しつつも、女性キャラが登場すれば容赦なく脱がすという、ダイナミックスピリットを見事なまでに体現しておられます。

(中略)

 さて、本作品の主人公の名前は釣大将(つりたいしょう)。そして、そのライバルが流竿次郎(ながれさおじろう)。どちろも、一寸のひねりも許さないストレートすぎる釣りバカネームです。この名前でビリヤードマンガのはずがないですものね。

J君『なんだ!? このマンガは!?』彩図社

 というスピリットで育った身としては、杉浦御大のキャラネームがトッピには思えないんです。どちらかというと幼年向けの漫画は、そういうものでいいのではないでしょうか。杉浦氏の場合にはご自身の思想信条(「サラダはえいよう」とか)が反映されているようにも思えますが、広く「まんまのネーミング」というてんでは、そういう水脈は受けつがれているように思います。


[][][]まんがはギャグだ~~みなもと太郎『お楽しみはこれもなのじゃ』角川書店 20:10 はてなブックマーク - まんがはギャグだ~~みなもと太郎『お楽しみはこれもなのじゃ』角川書店 - 蜀犬 日に吠ゆ

 去年読んだ本ですが、覚え書きを作っていませんでした。

 「アカチバラチ」の意味が書いてあったり、興味津々の一冊。

お楽しみはこれもなのじゃ―漫画の名セリフ

お楽しみはこれもなのじゃ―漫画の名セリフ

 みなもと先生が、1976~79年にかけて連載した漫画世界の通観。今に通じる部分もあり、時代を感じさせる部分もあります。後者の部分が圧倒的に面白いですよね。『マカロニほうれん荘』が連載を始めて

まだ海のものとも山のものとも判断しかねるが、ま、とにかくオモシロイと思わねばならぬのでありましょう。しかしつかれるナァ。

みなもと太郎『お楽しみはこれもなのじゃ』角川書店

 などと判断を保留したり。ちばあきお『キャプテン』連載開始の頃を思い起こして、

 この連載が始まったころは”ちば野球漫画”なんてフレーズがついていて、兄貴のイメージで売ろうという出版社側の態度がミエミエで、作者が気の毒に思えたんだけど、いまや”ちば野球漫画”といえばあきお物、というのが定着した感じで実に目出度い事ではありませぬか。

みなもと太郎『お楽しみはこれもなのじゃ』角川書店

 とあり、脚注に

5 せっかく目出たがっていたのに……合掌。(み)

みなもと太郎『お楽しみはこれもなのじゃ』角川書店

 なんて書いてあると、泣けてきます。

 『まんが学特講』のときにも痛感したのですが、やはり私は劇画と少女漫画のことをなんにも知らない。だからといって勉学のために基本文献をおさえようという気持ちは全然無い。だから、マンガの世界(描かれたひとつひとつではなくて、漫画という総体)のことは未来永劫分からないのでしょうねえ。碁娘を負かすためには、碁では駄目、剣では駄目、というようなものでしょうか。

 この本は、和田誠の「お楽しみはこれからだ」の完全パクリで、本家が映画の名台詞なら、こちらは漫画の名台詞を集めたもの。しかし、漫画の名台詞って、難しいですよねえ。

「やあ~~まだ こ 殺す 夏子はーん」

みなもと太郎『お楽しみはこれもなのじゃ』角川書店

 って、名台詞かなあ? 面白いけど。

「バババババババババババババババババババババババババ」

みなもと太郎『お楽しみはこれもなのじゃ』角川書店

 って、これは、堀江卓「矢車剣之助」が短筒をうつ効果音。杉浦茂「猿飛佐助」の項では

今回は氏の創り上げた登場人物の名前をズラリと並べてみることにしよう。それだけでも、氏の脳みそが尋常のものでない事を伝えて余りあるであろう。

「コロッケ五えんのすけ」

「うどんこプップのすけ」

「ふうせんガムすけ」

などは伝説的に有名である。その他、

「やさいサラダのすけ」

「おちゃづけ三ばいのすけ」

「がまぐちふくらみのすけ」

「なんでもポキンのすけ」

「ビタミンカロリーのすけ」

「えいようバタすけ」

「荒馬凄右衛門(あらうますごえもん)」

だけはなぜか漢字で名乗っている。大名では、

「かまぼこいたのかみ」

「ちくわあなのかみ」

「いくさすきのかみ」

「こうもりずるのかみ」

なんてのがいる。僕が一番すきなのは、

「おもしろ かおざえもん」

みなもと太郎『お楽しみはこれもなのじゃ』角川書店

 私は、「うどんこプップのすけ」がすきですねえ。というか、うどんこプップで十勇士と渡り合う度胸が凄い。ふうせんガムすけとかこうもりこぞうはそれでも空を飛んだり変装したりできますが、うどんこプップのすけはうどんこプップですからねえ。

 あと、「ながさかちやりくろう」なんてのもいたなあ。

 名台詞なら、さるとびが大久保彦左衛門のところに行って「ひこちゃんはございたくか?」とかね。いかん、杉浦茂は面白すぎる。『イエローマン』はつまんなかったけど!

猿飛佐助 (ちくま文庫)

猿飛佐助 (ちくま文庫)

 この、キャラのネーミングの話はおもしろいのでまたします。


 吾妻ひでお「やけくそ天使」

「とーとつですが あるじゃーのんに はなたばをあげてやってください」

 吾妻ひでお氏が『プレイコミック』に連載しているムチャクチャ漫画「やけくそ天使」の冒頭でこのセリフが出てくる。そそて読者にはどういう意味かさっぱりわからないのである。

「アルジャーノンに花束を」は、古典的SFの短篇で、(後略)

みなもと太郎『お楽しみはこれもなのじゃ』角川書店

 ひっかかりますよね? 短篇? 脚注に

2 ダニエル・キース作。後に、この短篇をもとに同題の長篇が書かれた。

みなもと太郎『お楽しみはこれもなのじゃ』角川書店

 うーん。そんな時期のネタだったのか。

やはり『プレコミ』で連載していた漫画の最終回で主人公たちのオンボロアパートが火事になって燃え落ち、

「やがて館は音も無くくずれ去り永久に私たちの目の前から姿を消してしまった」

 というクレジットがはいるのだが、これは当然エドガー・アラン・ポーの名作「アッシャー家の崩壊」のラスト・シーンである。”読者にわかろうがわかるまいが、とにかくオモロイと思えば俺は描く”という姿勢、良し悪しはともかく、このしたたかな生きざまはやはり一目、置くべきなのでありましょう。名作からのいただきを「漫画の名セリフ」というわけにはいかないのだが、「アルジャーノン」の方は「とーとつですが」の前置きで台詞の価値を見事に崩壊させているので合格。

みなもと太郎『お楽しみはこれもなのじゃ』角川書店

 合格だそうですよ。「アッシャー家」の方は不合格か。そうするとサブカルの立ち位置は難しくなる、ような。


[][]「陰謀趣味」~~福満しげゆき『僕の小規模な生活』4 講談社 19:23 はてなブックマーク - 「陰謀趣味」~~福満しげゆき『僕の小規模な生活』4 講談社 - 蜀犬 日に吠ゆ

 モーニングの連載が追いかけられていないので、けっこう初めて読んだ話もあり。

 ただもちろん、徐々に飽き始めているので、この辺でもう少し、こうなにか、ですね。欲しいですね。

僕の小規模な生活(4) (KCデラックス モーニング)

僕の小規模な生活(4) (KCデラックス モーニング)

 子供がそれなりに〈順調ではないあたりがリアルというか、「僕小」っぽいというか)成長。漫画も電子化、ストーリー漫画も出版され、急転直下の第四巻。

 嫁姑問題に対する福満先生の態度は、正しいのでしょうね。極論すると、親子の縁を切るのは夫婦の縁を切るよりも制度的文化的歴史的にハードルが高いので、嫁と姑を対等の存在として戦わせれば嫁が出て行くことになるわけですよね。さすが、毎日ワイドショーを見ている福満先生の分析は鋭い。

 福満先生の趣味は「不景気」と「陰謀」だそうで、これは長続きする趣味ですね。イヤな話ですが。


[][][]みなもと太郎『風雲児たち』18 リイド社 19:37 はてなブックマーク - みなもと太郎『風雲児たち』18 リイド社 - 蜀犬 日に吠ゆ

 夏ごろ17巻を読んだ記憶があり、順調だなあ、と奥付を見たら、「平成23年1月10日発行」とあったので、本屋さんがフライングで並べちゃったことがわかる。いいのかしら……と思ったら、アマゾンでは12月中に発行されたことになっています。この辺の適当さって、情報化社会にも受けつがれていくのですねえ。

風雲児たち 幕末編 18 (SPコミックス)

風雲児たち 幕末編 18 (SPコミックス)

 まあ単行本が出るのはいいことですが、物語の進行はさらに遅くなる。安政六年、大獄の本格化で長州の塾の先生吉田松陰がいよいよ江戸で裁かれる。だけで1巻ですからねえ。来年には「幕末編」が、第一シリーズ20巻を追い抜くでしょうけれども、どこまで続くのか果ては見えません。