蜀犬 日に吠ゆ

2011-04-05

[][][][][]春のうた を読む(その11) 18:41 はてなブックマーク - 春のうた を読む(その11) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 春雨や降るともしらず牛の目に

          小西来山(こにしらいざん)

 芭蕉より十歳ほど年下の大坂生まれの俳人。十代でもう一家を成すほどの才だったらしい。右の句を見ても、感覚の鋭敏さ新しさには驚かされる。牛のみひらいた目に、細い細い春雨が降りこんで吸われてゆく。「降るともしらず」の表現に春雨がみごとにとらえられている。別に「白魚やさながら動く水の色」という春の句もある。すきとおった白魚の動きを、まるで水そのものが動くようだというのである。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 見えないものを語る時、言葉は研ぎすまされていなければなりませんよね。なるべくなら譬喩でない方がいい。ここでは、「降るともしらず」と突っ放した感じが春雨の細やかさを伝えています。


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 白魚(しらうお)の小さき顔をもてりけり

         原 石鼎(はら せきてい)

 『原石鼎全句集』(昭四三)所収。大正期「ホトトギス」黄金時代の花形俳人の一人。白魚の句では、芭蕉の「明ぼのやしら魚白きこと一寸」が有名だが、前回紹介の小西来山作「白魚やさながら動く水の色」に配すべき現代の句をあげれば、まずはこれだろう。大正十二年の作。白魚のあのすき通った小さな体に、つぶつぶの目があり、顔があったこと。その顔が、何ともまた小さいくせに、りっぱに顔であること。それに気づいた驚きと感銘。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 白魚にはあんまり思い入れがないせいでしょうか。よくわかりません。

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)