蜀犬 日に吠ゆ

2011-04-06

[][][][][]春のうた を読む(その12) 20:45 はてなブックマーク - 春のうた を読む(その12) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 花衣ぬぐやまつはる紐いろ\/

      杉田久女(すぎたひさじょ)

 『杉田久女句集』(昭二七)所収。大正時代は虚子門に女流俳人が輩出したが、久女の情熱的で大胆な作風はひときわ目立った。美貌をうたわれたが実生活では悲劇の人で、句集も没後七周忌に初刊行。花衣は花見衣装。花見帰りの軽い疲れに体をほてらせた女が、一本一本着物の紐をほどき捨てていきながら、あらためて紐の多さにわれと驚いている風だが、そこにこそ女の知る愉悦も快感もあったし、またみずから桜となって花びらを散らす思いもあった。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 と、男が感じるだろうという計算でつくったように思えますけどね。

 あと、「大返し」を\/で書くというのはあまり見ないのですが、他の人どうやっているのでしょう。


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 ちらであれかしらさくら花 ちれかし口と花ごころ

        閑吟集(かんぎんしゅう)

 『閑吟集』は室町中期の歌謡集。三百十一首の歌詞を四季と恋を中心に編む。全体の三分の二を占める恋の歌にも、また人生観をうたった歌にも、世の転変の激しさを背景にした刹那主義、享楽主義が色濃く流れている。右の小歌の「口と花ごころ」は、口先だけの不実さと、桜花のように移ろいやすい一時の情けの意。花よ散るなよ、花ごころよ散れ。散りやすい花よりももっとはかないのが人情さ、という嘆きをこめた、花ぼめの唄。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 これもあんまり筋がいいとは思えない。まあ過去の人を現代の基準で裁くのは駄目なのでしょうけれども、そういう意味では時代を超えられなかった歌のように思います。


折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)