蜀犬 日に吠ゆ

2011-04-14

[][][][][]春のうた を読む(その20) 19:42 はてなブックマーク - 春のうた を読む(その20) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 眠らざりける暁(あかつき)に少年のあわれ夥(おびただ)しき仮説を下痢(くだ)す

               岡井隆(おかいたかし)

 作者は戦後短歌の実作、理論両面での主導的存在。右は昭和三十六年の『土地よ、痛みを負え』に収める。当時安保問題その他の緊張は短詩型文学にも強い刺戟を与え、野心的な試みの数々を生ませた。そういう時代の刻印はこの歌にもある。未消化な観念のひしめき合いが日々の現実そのものであるような若者の、試行錯誤の悩み、また喜びを、仮説を下痢するという意表をつく生理的表現でえがく。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 変なリズムですが三十三音で2字余りですか。くよくよ考えているうちに朝になってしまったという話ですか。それは胃腸も弱ります。


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 怺(こら)へつつ声あげぬ子は係累(けいるい)を隔てて病めりギプスの中に

               島田修二(しまだしゅうじ)

 第一歌集『花火の星』(昭三八)所収。作者には身体に障害のある息子をうたった秀歌が多く、これもその一つ。ギプスをはめられてベッドに横たわる子は、苦痛をこらえて泣きごともいわない。そのけなげさが親の心をいかに打ち、また嘆かせようとも、子は彼だけの孤独の中で耐えていかねばならない。「係累を隔てて病めり」という抑制した表現に、病児をもつ親の無量の思いが溢れている。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 できる事ならかわってあげたいと思えども、所詮他人は他人でしかないという絶望感がたまりませんね。春の歌だというのになんでこんなくらいのばっかり選ぶのでしょう。(まあ冬の歌なら暗くていい、という事はないのですが。)


折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)