蜀犬 日に吠ゆ

2011-04-17

[][][][][]春のうた を読む(その23) 20:28 はてなブックマーク - 春のうた を読む(その23) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 大和は国の真秀(まほ)ろば 畳(たた)なづく 青垣(あをかき) 山籠(やまこも)れる 大和しうるはし

                 古事記歌謡(こじきかよう)

 古代伝説の悲劇の皇子倭建命(やまとたけるのみこと)が伊勢の能煩野(のぼの)で絶命する時、故郷をしのんで歌ったものという。「真秀ろば」はまほら、マホラマと同じで、すぐれた所の意。一首、大和は陸の秀でた所、重なりあう青い垣根のような山々に抱かれた大和こそ、げに美わしい所、という意味だが、実際は皇子の事跡とは無関係に、国見の儀式の時歌われた国ぼめの歌だろうという。しかし、悲運の皇子のいまわのきわの懐郷の歌として読むとき、この歌はまことにあわれ深い。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 いやあ、学生のころまで「まほろば」の意味をしらずにこの「大和は国のまほろば」って言葉を常用していて、恥ずべき過去ですね。仕事について、何年かしてから教えてもらいました。それで、「大和」と「日本」を一緒くたにしている人がたまにいて、たぶんその人は沖縄人。

 ところで、これって春の歌?


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 哀しきかな 放逐せらるる者(ひと)

 蹉跎として精霊(せいれい)を喪(うしな)へり    菅原道真(すがわらのみちざね)

 右大臣道真が政敵藤原時平の讒言(ざんげん)で太宰府に左遷され、二年後配所で没するまでの間に作った詩集『菅家後集(かんけこうしゅう)』の一節。道真失脚は平安前期における藤原氏の権力制覇を象徴的に示す事件だった。彼が配所にあった折しも昌泰から延喜に改元されたが、道真に大赦は及ばない。「蹉跎」はよろよろつまずくこと。「精霊」は魂。宇宙万物の根元をなす霊気の意もある。無実を叫んでもだれ一人耳傾ける者とてない敗残者の悲痛な嘆きが、二行にこもっている。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 これも春の歌かは謎ですねえ。

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)