蜀犬 日に吠ゆ

2011-04-20

[][][][][]春のうた を読む(その26) 17:13 はてなブックマーク - 春のうた を読む(その26) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 しみじみと田打ち疲れしこの夕べ畔(くろ)をわたれば足ふるひけり

                結城哀草果(ゆうきあいそうか)

 哀草果は昭和四十九年に八十歳で没した山形の歌人。随筆家としても知られた。農耕の合間に独学、アララギ派の重要な歌人となった。右は大正期の作で『山麓』(昭六)所収。野良仕事の機械化が進んだ今ではこういう情景も少なくなったが、「しみじみと」といい「足ふるひけり」という表現には、時代をこえて人をうつ力がある。彼のこの種の歌は、『万葉集』東国農民の歌を連想させる所がある。

大岡信『折々のうた』岩波新書

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 ものの種子(たね)にぎればいのちひしめける

           日野草城(ひのそうじょう)

 第一句集『花氷』(昭二)所収。「ホトトギス」で早熟児の名をほしいままにし、のち「旗艦」で新興俳句運動の先頭に立った草城は、戦後は病に苦しみ、しみじみ沈潜した句境をひらいたが、『花氷』のさっそうたる華やかさが、何といっても草城という俳人の印象を決めていよう。掲出句、二十代半ばの青年の鬱勃たる情感。「ところてん煙の如く沈み居り」、「春の灯や女は持たぬのどぼとけ」その他の句も当時の作として有名。

大岡信『折々のうた』岩波新書
折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)