蜀犬 日に吠ゆ

2011-05-04

[][][][][]春のうた を読む(その40) 19:10 はてなブックマーク - 春のうた を読む(その40) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 たてがみをとらへまたがり裸(はだか)うまを吾嬬男子(あづまをのこ)のあらなづけする

                      橘曙覧(たちばな あけみ)


 曙覧は福井生れの幕末の国学者・歌人。日常茶飯に取材して自在に歌い、江戸時代出色の歌人だった。歌集は号をとって『信濃夫廼舎(しのぶのや)歌集』という。裸馬をならす情景をこんな風に歌った歌人は、まず他にはいなかった。題材の面白さに加えて、きびきびした詠いぶりにこの人らしい魅力がある。「たのしみは」で始まる「独楽吟」五十首や飛騨銀山の採掘を歌った作なども興味深い。正岡子規が曙覧を称揚したことはよく知られていよう。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 「たてがみ」「とらへて」「あづま」「あらなづけ」と、双声の響きの美しい歌ですね。うつくしいうた、もうつくしい語呂です。うつくしいうまや、うつくしいうどん、などはうつくしいのですが、うつくしい風呂、うつくしいテレビは語感が悪い。

 美しい花がある、花の美しさなどというものは、ない。←うそくせえ。でも、うつくしいうそではあります。


 これで、「春のうた」はおしまい。もう夏になります。

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)