2011-05-23
■ [筆記][国文][評論][折々のうた][夏歌]夏のうた を読む(その14) 
27
朝(あした)に紅顔あつて世路(せろ)に誇れども
暮(ゆふべ)に白骨となつて郊原(かうげん)に朽ちぬ 義孝少将(よしたかのしょうしょう)
『和漢朗詠集』巻下「無常」。作者藤原義孝は平安中期の人。日本第二の美人と称えられた麗景殿女御(冷泉院の后)の夭折を嘆じた漢詩の一節という。朝には若々しい紅顔に浮世の快楽を満喫していても、夕には白骨となって郊外の原野にくちはてるのが、死すべき人間のさだめなのだと、人生無常をうたう。浄土真宗中興の祖蓮如の有名な「白骨の御文」は、この句に基づいて書かれた。
大岡信『折々のうた』岩波新書
御文はてっきり漢詩由来だと思い込んでいました。勉強になります。
28
白珠(しらたま)は人に知られず 知らずともよし 知らずとも吾(われ)知れらば
知らずともよし ある僧
『万葉集』巻六。奈良の元興(がんごう)寺の一僧、衆にぬきんでて学問があったが頭角をあらわすことができず、かえって他の連中に馬鹿にされてばかりいた。そこでみずから嘆いてこの歌を作った、と註にある。真珠(白珠)は人に真価を知られない。知られなくてもかまいやしないさ。世間のやつらが知らなくても、自分で自分の真価を知っているなら、連中が知らなくたってかまいやしないさ。
大岡信『折々のうた』岩波新書
そうして引きこもる。

- 作者: 大岡信
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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