蜀犬 日に吠ゆ

2011-06-04

[][][][][]夏のうた を読む(その26) 19:28 はてなブックマーク - 夏のうた を読む(その26) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 熊野川下(くだ)す早瀬の水馴(みな)れ棹(ざを)さすが見馴(みな)れぬ浪の通(かよ)ひ路(ぢ)

                   後鳥羽上皇(ごとばじょうこう)


 『新古今集』巻十九神祇歌。新古今の選定者にして代表歌人。尊崇した熊野権現に詣でて、本宮から新宮まで早瀬を下った。「水馴れ棹」(熟練の棹)と「見馴れぬ」は同音の対照。「さすが」はとはいえ。「さす」は「棹」の縁語。熊野川の急流をさばくなんとみごとな水馴れ棹よ。とはいえわが身にはまた、なんと珍らしい見馴れぬ浪の通い路よ。技巧を尽しているが、語調には明るい流動感、心には権現への帰依と讃美。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 ダジャレじゃねえか。なにが「同音の対照」だ。

 熊野権現って、行ったことないなあ。行ってみたい。



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 閑(しづ)かさや岩にしみ入る蝉(せみ)の声

             松尾芭蕉


 『奥の細道』山形の立石寺(りゅうしゃくじ)(土地ではリッシャクジという)参詣のくだりに出る。元禄二年五月二十七日(陽暦七月十三日)。同寺の全山凝灰岩でできた境内は、今も「心澄みゆく」「清閑の地」の面影を残す。句は芭蕉吟味中の秀吟。断続するサ行音が、日本詩歌の鍵ともいえる「しみ入る」感覚、その澄明幽遠さを表現する。蝉が鳴きしきっていても、その声のかまびすしさがきわまる所には浄寂境そのものが出現するという宇宙観。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 コーイチくんのスタンド「エコーズ」ですね。パミィィィィィ!


折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)