2011-06-15
■ [筆記][国文][評論][折々のうた][夏歌]夏のうた を読む(その37) 
73
鳳仙花(ほうせんか)散りて落つれば小(ち)さき蟹(かに)鋏(はさみ)ささげて驚(おどろ)き走る
窪田空穂
『鏡葉(かがみは)』(大十五)所収。夏の海岸でふと目撃した情景。鳳仙花の赤い小さな花が散り落ちた時、その下にいた小ガニがあわてて逃げた。「鋏ささげて驚き走る」という観察が歌の中心だが、なかんずく「ささげて」の一語がかなめである。小ガニの動作を描写しながら、同時に作者が興じているその気分と理由をも、この語で言いとめている。たとえば「かかげて」では、そうはいかない。
大岡信『折々のうた』岩波新書
蟹にとって鋏は商売道具ですからね。たとい逃げる時でも大事に運ばねば。
全然関係ないのですが、鳳仙花の実は熟するとはじけるって、その音を聞いたこと無いなあ。NHK 教育の理科とかで映像を見た記憶もありません。
74
夏深み入江のはちすさきにけり浪にうたひてぐる舟人
藤原良経(ふじわらのよしつね)
家集『秋篠月清集』所収。『新古今集』撰者の一人。年若くして太政大臣となった博学多才の貴公子。和歌を藤原俊成・定家父子に学び、彼らの御子左家(みこひだりけ)の有力な支援者だった。後鳥羽天皇の信任厚く、新古今歌壇を隆盛にみちびいたが、三十八歳で急逝した。歌には孤愁の影がある。しかし右の舟人の描き方にもみられるように、生得の澄明感、のびやかさをもった歌人だった。
大岡信『折々のうた』岩波新書
「入り江の蓮」って、海にも咲くのか、近江あたりの入り江なのでしょうか。

- 作者: 大岡信
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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