蜀犬 日に吠ゆ

2011-06-24

[][][][][]夏のうた を読む(その46) 21:42 はてなブックマーク - 夏のうた を読む(その46) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 ひとをいかる日/われも/屍(しかばね)のごとく寝入るなり

             八木重吉(やぎじゅうきち)


 『定本八木重吉詩集』(昭三三)所収。昭和二年二十九歳で結核のため死んだ。生前には詩集『秋の瞳』一冊を出しただけだが、とみ子夫人に残された大量の遺稿が、後年彼女と再婚した歌人吉野秀雄らの尽力で公刊され、今では多くの愛読者を持っている。英語教師で熱烈な無教会主義のキリスト者だった。詩は短詩が多い。単刀直入に真実を言う。詩の原質たる心の燃焼だけで成り立っている詩だ。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 ひとをいかるは、人の行いではない。ひとにいかるはぎりぎり有りだけど、ほめられた行いではない、ということでしょうか。


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 かんがへて飲みはじめたる一合の二合の酒のゆふぐれ

                 若山牧水


 『死か芸術か』(大一)所収。牧水は恋と旅と酒の歌でこよなく愛誦される。ふつふつと湧きあがる思いがそのまま三十一音の歌となって、作者の孤独な心をあめつちの間に舞わせ、読者をも招き寄せた。それにしても、牧水歌集を読んでいると、彼の酒の歌が早くから老成していたことに今さらながら驚く。二十代半ばすぎでもうこんな歌があり、また「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒は静かに飲むべかりけり」があった。みな独酌好みの歌だ。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 独酌サイコー。

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)