2011-07-05
■ [筆記][国文]放哉と山頭火~~高島俊男『お言葉ですが…』別巻2 連合出版 
放哉と山頭火で言えば、山頭火の方が好きなんです。単に放哉居士を知らないだけなんですけど。
高島先生が、各人の作十句づつをひいていますので、それにのっかってみます。
放哉と山頭火
尾崎放哉と種田(たねだ)山頭火はセットで名が出されることが多い。丸谷さんがそうしているように。
共通点が多い。
自由律俳句をつくった。――一般に俳句には二つのきまりがある。五七五の形につくること。季語をふくむこと。自由律俳句はこの二つの決まりから自由である。だから俳句というより短詩と呼んだほうがいいかもしれない。どんな内容をどんな形につくってもいいのだから楽なようだが、かえってむずかしいだろうと思う。韻律と季語に拘束されてつくるほうがつくりやすいだろう。両人ともこの自由律俳句で知られる。
ふつうの人生を歩みはじめたが、ある時いっさいを捨て、妻子も捨て、漂白的人生を送った放哉は無住の寺の寺男、山頭火は出家して行乞(ぎょうこつ)僧だから両人とも仏教にかかわりがある。
荻原井泉水の門下で句誌『層雲』の同人である。
(略)両人の句を十づつ書いて行ってコピーし、皆さんにくばってゆっくりよみあげ、聞いてもらった。左の各十句である。
尾崎放哉
一日物云はずう蝶の影さす
氷店がひよいと出來て白波
わかれを云ひて幌おろす白い指さき
人をそしる心をすて豆の皮むく
漬物桶に塩ふれと母は産んだか
とんぼが淋しい机にとまりに來てくれた
入れものがない兩手で受ける
咳をしてもひとり
春の山のうしろから煙が出だした
墓のうらに廻る
種田山頭火
分け入つても分け入つても青い山
うしろすうがたのしぐうれてゆくか
鐵鉢の中へも霰
雨ふるふるさとははだしであるく
しぐるるや死なないでゐる
あるけばかつうこういそげばかつこう
みんなかへる家はあるゆふべのゆきき
うどん供へて、母よ、わたくうしもいただきまする
おちついて死ねさうな草枯るる
おとはしぐれか
十五分ほど休憩して、そのあいだによみかえしてもらい、いいと思った句を投票してもらった。二十句のなかから三句えらび、一番いいと思ったのに三点、つぎ二点、つぎ一点である。
(略)
句にせよ歌にせよ、どんな解釈があり得るかわからないのだから、一方的に自分の解釈をのべることは極力抑えねばならぬ、心すべきことだ、と思ったことであった。
(略)
この二人についてお客さまの一人が、いっさいを捨てて無一物になった、妻も子も捨てた、と気軽に言うけれど、「捨てられる妻の身にもなってほしいわね」とおっしゃったのは、言われてみればまことにもっともな意見でありました
高島俊男『お言葉ですが…』別巻2 連合出版
山頭火は、酒の句がいいんですよ。退廃的で。もちろん、放哉の酒の句のことはまったく知らないのであれですが、本当は放哉の句にも目を通さねばならないのでしょうね。
風
どこでも死ねるからだで春風
何とかしたい草の葉のそよげども
風の中声はりあげて南無観世音
道
木の芽草の芽あるうきつづける
(宇治平等院)
うららかな鐘を撞かうよ
まつすぐな道でさみしい
酒
酔へなくなつたみじめさはこほろぎがなく
よい宿でどちらも山で前は酒屋で
膝に酒のこぼるるに逢ひたうなる
つまづいても徳利はこはさない枯草
小学館編集部『はぐれ雲山頭火』小学館文庫

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