蜀犬 日に吠ゆ

2011-07-14

[][][][]馮夢竜 太田辰夫『平妖伝』大系36 平凡社 を読む(その7) 19:59 はてなブックマーク - 馮夢竜 太田辰夫『平妖伝』大系36 平凡社 を読む(その7) - 蜀犬 日に吠ゆ

第五回 左黜児(さちゅつじ) 廟(びょう)中にて酒を偸(ぬす)み/ 賈(か)道士 楼下にて花に迷う

第五回

 すると老婆は感づいて、

「仇は解くべきもので、結ぶべきものではない。おまえ自身の不注意から人に見破られ、苦しい目にあったのだ。さいわい厳半仙と縁あって、命を救われた。片足が不具になったにしろ、それは外見だけのこと。昔、七国の時の孫臏(ひん)ぐんしや、唐の婁(ろう)師徳丞相もびっこだっった。また上八洞の神仙のなかにも、鉄拐(てっかい)という方がおられる。息子や、これは恥ではないのだよ」

 厳半仙の名前を口に出したために、老婆はにわかに半仙から言いつけられた言葉を思いだし、凄然として涙を流しました。瘸児は、

「おっかさん。あんたの言うとおり、恨み心を持たなければいいんだろう。どうして涙を流すんです」

「およそ道を得たものは神も制することができず、亡霊も禍(わざわい)することができず、人も傷つけることができない。わたしたちは身に道術をもっているわけではなく、ただ人間の姿に化けて、愚人を惑わすだけだから、かならず運の尽きる時がくるのだよ。万一、この後、もしものことがあれば、また太医に助けてもらうわけには行きますまい。まして半仙さまは、おまえたち二人とも災難があるとおっしゃっていたのだ。いったい、しまいはどうなることか」

 そこで半仙から、師を尋ね道を訪ねよと勧められた話を、こと細かに述べて聞かせますと、二人の子は、思わずゾッと総毛立ちました。

馮夢竜 太田辰夫『平妖伝』大系36 平凡社

 運命の車輪が転がり始める……


 秩序と混沌の天秤がどちらに傾くのが、今はまだ誰も知らない……


 ここでタイトルロールですよねえ。


 「平妖伝」。




 では、どこで師を求めるか。

 瘸児は東京汴州でシティライフを提案。根拠なし。

 聖姑姑は祖父から白雲洞の話を聞いていたので、道を訪ねるならそこだろうと伏線をきっちりと拾う。

 媚児は、瘸児の足では湖北の白雲洞までの長旅に耐えられないだろうとして、永興の西岳崋山周辺の仙人を訪ねようと提案します。それで駄目なら東京に行きましょうとし、瘸児も賛成したのでこれが採用。


 成都のさらに西の西川だから、湖北省*1が遠いのはいいとして、東京開封府はもっと遠い! 妹がお兄様の足を気遣っていますが、お兄さんは何も考えてない。

 かくして一路、洛陽を目指す。


 聖姑姑は乞食婆、瘸児はカタワの道士、媚児は田舎の小町娘ですから、たちまち行く先々で上二人は忌避され、末っ子はちょっかいを出される始末。変化出来るんだからコンセプトをそろえたらいいのに。

 

 旅の途中、泊まる所もなくて「義勇関王廟」の亭で休んでいますと、廟の番人乜(ニエ)道人が酒を持って本堂の門を開けようとします。瘸児はすばやく酒がめを奪ってゴクリゴクリ。道人たちまち瘸児を追いかけて亭に達し、

第五回

 道人は顔色をかえて、まだ怒鳴りつけようとしましたが、ふと老婆の背後に、身を隠すが如く立っている美しい娘を見つけると、腹の中までぐんにゃりしてしまい、カッとんった怒気はジャワの国へと消えさりました。

馮夢竜 太田辰夫『平妖伝』大系36 平凡社

 なんだこれ。カワイイは正義?

 一応廟の主のご沙汰を願うことになりました。


第五回

かれは姓は賈(か)、道号を清風といい、年のころは二十四、五、道士ではありますが、日ごろちょっとしたくせがあり、色と酒とが大好物。なにぶんこの剣門山は辺鄙(へんぴ)な山奥、にわかに女の顔が見たくなりましても、叶うものではござりませぬ。乜道人から、きれいな田舎娘が井亭のなかに聞かされては、かめの中の酒の分量をしらべる暇はありません。いそいで本殿の前へ出、雪を踏んでまっすぐに井亭へとやってまいります。

馮夢竜 太田辰夫『平妖伝』大系36 平凡社

 やってきた廟主が、この雪の夜にお嬢さんは野宿できますまい、といえば、いざり野郎が「好意を受けましょうよ」と、乞食婆が断ると鄙にはまれな美少女が「おっかさんのよろしいように」。

 で、承知したことになる。このへん意味不明。

 まあそれで賈清風が一行を晩餐に誘います。もちろん、ターゲットは媚児。


 宴もたけなわ。

第五回

これは明らかに、道人を眼ざわりに思い、向こうへ行かせようとの考えです。ところがこのこの乜道人は、年は若くても、賈道士同様、本分を守らない奴。もとは剣州のとある役人の家の小姓でありましたが、主家の女中と乳繰りあったため半死半生の目にあい、追い出されて乞食となりました。かれの父親が生きていたころ、この寺の下男と隣合わせて住んでいたので、下男が賈道士に口をきき、この寺に置いてやることになったのです。しかし、もとの根性は改まっておりませんので、花のような美しい娘を見ては、そのままひきさがるわけはありません。

馮夢竜 太田辰夫『平妖伝』大系36 平凡社

 美しいということは、罪なの?


 夜も更けて、部屋に分かれます。

 賈道士は、策を練り始めます。


 石壁は、時を待つのはいいけれども遠ざかってまっせ!

中国古典文学大系 (36)

中国古典文学大系 (36)

*1:ってたぶん清代の行政区だけどなあ