蜀犬 日に吠ゆ

2011-08-10

 みんな生きてゆく音たててゐる(山頭火)

[][][]柴田元幸『生半可な学者』白水Uブックス 20:47 はてなブックマーク - 柴田元幸『生半可な学者』白水Uブックス - 蜀犬 日に吠ゆ

 みんな生きてゆく

怒りの上杉謙信

 岩田一男の名著『英語に強くなる本』といえば出版史に残る大ベストセラーで、僕も高校生のときに読んだ記憶がある。その中にこんなエピソードが載っていた。

――ある日本人がロンドンの地下鉄の駅で、West Kensington (ウェスト・ケンジントン)までの切符を買おうとした。ところが切符売場で何度この地名を言っても、いっこうに通じない。手を変え品を変えいろんな言い方をしてみても、相手は首をひねるばかり。頭にきて、


 上杉謙信!


と叫んだら、あっさり通じた……。

 高校生の時は、まさかね、ぐらいにしか思わなかったけれど、いま考えてみると、大いにありそうな話である。

柴田元幸『生半可な学者』白水Uブックス

 これはもう、都市伝説レベルであちこちからききましたが、英語できない人には無駄話ですし英語を学ぶ人にはマイナスでしょう。ネイティブの脳内にあわせて英語を発音しろなんて、偶然を信じすぎている。


[][][][][]秋のうた を読む(その3) 19:28 はてなブックマーク - 秋のうた を読む(その3) - 蜀犬 日に吠ゆ

 ぼくは死んでいる

5

 罪びとのごくに坐して妻とふたり秋夜(しうや)の骨を守らむとする

                    木俣 修(きまた おさむ)


 『落葉の章』(昭三〇)所収。作者の第一歌集は『高志(こし)』。のち長男を得たとき作者は同じ名を息子につけた。タカシという。その子が四歳の時重病にかかり、三年病んで亡くなった。作者生涯の悲痛事だった。亡児百ヵ月の歌のひとつ。秋夜、遺骨とともに坐る父母。幼い子を先立たせた親には、その死がいかに不可避な場合でもなお、みずからを「罪びと」と感じる思いがある。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 子がいないとぜんぜんわからない感覚ですよね。1979年あたりの自民党は特定産業との癒着を深めて21世紀の少子高齢化を引きおこしているのですが、まあどうでもいいと思ってたんですかね。


6

 くろがねの秋の風鈴(ふうりん)なりにけり

                  飯田蛇笏(いいだだこつ)


 『霊芝』(昭一二)所収。近代の秋の名句として有名。字面の意味は、秋、鉄の風鈴が鳴った、というにすぎないが、この句はそんな字面の意味のよって鳴っていない。「くろがねの」は単に鉄を意味するだけではなく、音感そのものがどっしり思いものの印象を生む。「くろがねの秋の」と続く時、秋がひそかにくろがねに変じ、やや季節はずれの風鈴の中で、深沈と鳴るのである。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 この解説からはフォースの暗黒面しか読みとれないので時間をおかせて下さい。


折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)