蜀犬 日に吠ゆ

2011-08-11

 ふくろふはふくろふでわたしはわたしでねむれない(山頭火)

[][][][][]秋のうた を読む(その4) 19:51 はてなブックマーク - 秋のうた を読む(その4) - 蜀犬 日に吠ゆ

 

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 秋である時計を竹にかけつつゐて

            北原白秋


 木俣修編の白秋遺句集『竹林清興』(昭二二)所収。関東大災で罹災した時作った「後」三十八句の一つ。白秋は当時小田原に住んでいた。地のため家が大破した。やむなく裏の竹林に蚊帳を吊って暮らした。右はその折りの句だが、のびやかな表現は、彼が詩や短歌のみならず、俳句にも秀でていたことを示している。当時の丘での昼食の句に、「せめてこの箸にもとまれ蜆蝶(しじみちょう)」もある。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 汚い! とは思いますが、関東大災の時は自然が人を守ってくれた。そういう部分があったのかと思うと複雑な気持ちになります。私たちに都合良く改変してしまった山や川は、私たちを守ってはくれないのですから。


8

 芋(いも)の葉にこぼるる玉のこぼれこぼれ子芋(こいも)は白く凝(こ)りつつあらむ

                        長塚節(ながつかたかし)


 『長塚節歌集』(大六)所収。正岡子規の高弟。伊藤左千夫とともに初期「アララギ」を主導した。茨城に生まれ住む。結核のため三十六で没したが、鋭い観察で冴えた感覚を裏打ちした歌は、完成された風格をもっていた。明治四十年九月二日作「初秋の歌」の一首。里芋の葉から地べたへ落ちつづける夜の露。そのしろがねの露がしみて、地中の芋はさぞ白く輝きつつ実っているだろうという。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 「しろがねの露」ってあんまり聞かない表現だからグーグル検索してみましたが、焼酎の銘柄でした。大岡先生がおっしゃるのですからなにか典拠のある言葉だとは思うのですが、たどれませんでした。白金酒造の自己紹介も、意味不明。

 しろがねというのは要するに「銀Ag」のことで、金属の結露のことだと思います。でも、里芋の白さをしろがねに求めるのはちょっとよく分かりません。長塚さんはしろがねなんて言ってないし。朝日に白くきらめく露の光が芋を白くする、で何が悪いのでしょう。大岡先生はときおり自分の妄想へ暴走するから困る。

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)