蜀犬 日に吠ゆ

2011-08-15

 酒がやめられない木の芽草の芽(山頭火)

[][][][][]秋のうた を読む(その8) 19:57 はてなブックマーク - 秋のうた を読む(その8) - 蜀犬 日に吠ゆ

 

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 宵(よひ)のまの村雲づたひ影見えて山の端めぐる秋のいなづま

                     伏見院(ふしみいん)


 『玉葉集』秋上。鎌倉後期、京極為兼(きょうごくためかね)が伏見院の命で撰んだ同勅撰和歌集中、最も入集歌の多いのは、伏見院の九十三首。帝王だから多かったのでhない。院は実際に当時の代表歌人だった。『玉葉集』は恋歌の数を押さえ、観察細やかで動的な叙景歌を多くして和歌伝統に新味を加えたが、雲を伝って低く移動してゆく秋の稲妻をたらえたこの歌の、一種映画的効果は、新風の魅力をよく示している。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 秋のいなづまのほうが怖い。


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 秋の江に打ち込む杭(くひ)の響かな

            夏目漱石(なつめそうせき)


 『漱石全集』所収。漱石は明治四十三年八月胃潰瘍のため伊豆の修善寺で吐血し、一時仮死状態となった。死からの蘇生は彼の生涯の大きな転機となった。句はその十日ほど後、ふと病床からできた作。澄み渡る秋空。広い入江。そこに打ちこむ杭の音が遠くから響いてくる。山間地に横たわる病人の幻聴か。とはいえ、そこに漱石の心はたゆたい、澄みきって呼吸していた。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 諸星大二郎先生の『孔子暗黒伝』に「魚は生、鳥は死」とありました。日本の土地で言うなら、「山は生、海は死」なんじゃないかと思います。桃太郎は上流から、かぐや姫は竹林から生まれるからです。『楢山節考』的な、姥捨て山はまた生き返ってほしい願望の表れなのではないでしょうかね。海へ流しちゃうとおしまいだから、と。『平家物語』でも、壇ノ浦にぼんぼこ飛び込んだ平家の行き先は竜宮で、死後の世界扱いされていますし。と、いま思いついた。


折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)