蜀犬 日に吠ゆ

2011-08-16

 よい道がよい建物へ、焼場です(山頭火)


[][]行列大好き民族~~柴田元幸『生半可な學者』白水Uブックス 21:02 はてなブックマーク - 行列大好き民族~~柴田元幸『生半可な學者』白水Uブックス - 蜀犬 日に吠ゆ

 なんだか日本人は世界一きっちり行列をつくるだのなんだのという話があって、そーなの? と疑問。だいたい日本人が「日本人は……」と言い出したとき、他の国のことを知らないでしゃべっているのが普通なので、眉唾なんですよね。

 イギリス人が行列大好きって話を本棚であさったら、意外と身近なところにありました。でも、出典がジョージ・ミケシュ『外人処世訓』かあぁ…。本質を突くことも多いけれど、だいたいからかいや誇張でイギリス風俗を伝える人だから、字面のとおりに読み取ってはいけないかも。でも面白いので書留。

私はいかにしてイランとアフガニスタンの国境で一生を終えずにすんだか

 列を作って順番を待つ。この行為は万国共通であるように思えるが、そのやり方は国によって相当違う。そして、きちんと並ぶことで有名なのは、何といってもイギリス人である。

 列、といえば誰でも line という英語を考えるが、イギリスではむしろ queue ということのほうが多い。これは「キュー」と読む。綴りにやたらと無駄が多く、音は実に簡潔なあたり、いかにもイギリス英語らしい。「列を作る」は queue up 、「割り込む」は jump the queue である。

 バス停留所で、郵便局で、公衆便所で、彼等は実に頻繁に、実に整然と並ぶ。それはほとんど国民的情熱といってよい。ロンドンのバス停の標識にはよく QUEUE THIS SIDE (こちら側に並んで下さい)という指示が書かれている。これだけならどうってことはないが、見ると標識の裏にも QUEUE THE OTHER SIDE (向こう側に並んで下さい)と書いてあるのである。こういう几帳面さを私は愛する。最近はロンドンも外国人が増えて、かつてほど整然とした列が見られなくなってきたのは――僕だって外国人なんだから偉そうなことは言えないが――ちょっと残念。

柴田元幸『生半可な學者』白水Uブックス

 これを読んで、、ブレナン・高橋『ゾンビ塔の秘宝』二見書房 のネタが分かった時は嬉しかったなあ。

123

 いままででいちばん不吉な(不吉なものは何度も見ているだろう)光景だ。

 死体が、上着の後ろを杭で串刺しされてまっすぐ立てられているのだ。その硬直した指は、ドクロのような入り口を持つ、不気味な塔をさしている。串の先端には紙きれがさしてあり、乱暴な文字が書いてあった。

 〈ゾンビ塔こっち!〉

 ドクロのような入口の上には腐った軍旗が掲げられていた。片目の鬼の紋章と〈死の軍団〉の文字が縫いとられている……。

 ブルルルッ! と武者い。ここまで来て、いまさら家に帰ってお茶の時間でもないだろう。

     不吉な入口に飛びこんでみるなら、143へ。

     その前に、紙きれの裏に何が書いてあるか調べるならば、152だ。

ブレナン・高橋『ゾンビ塔の秘宝』二見書房

 ロンドンのバス停の諷刺だとは気づきませんよ。ふつう。

152

 死体から発散する悪臭に息をとめて、紙きれを裏返してみる。すると、

 〈ゾンビ塔あっち!〉

 とあった。

 ばかばかしい道標につきあうのもこれまでだ。

 〈死の軍団〉の本拠地には何が待ち受けているか、全速力で、143へ行け。

ブレナン・高橋『ゾンビ塔の秘宝』二見書房

 こういうのでいいんだよ、こういうので!

230

 まったくいらいらする。毎度おなじみの空振りセクション、これだからこのシリーズの評判がどんどん悪くなるんだ。

ブレナン・高橋『ゾンビ塔の秘宝』二見書房

 行列と完全に話がずれたので、あとでエントリ立て直す。

生半可な学者―エッセイの小径 (白水Uブックス)

生半可な学者―エッセイの小径 (白水Uブックス)





[][][][][]秋のうた を読む(その9) 22:09 はてなブックマーク - 秋のうた を読む(その9) - 蜀犬 日に吠ゆ

17

 さむくなりぬいまは螢も光なしこ金(がね)の水をたれかたまはむ

                        螢(ほたる)(良寛(りょうかん))


 日本古典文学大系『近世和歌集』所収。「ほたる」とは越後国与板(よいた)の山田屋女中およしが、仲良しの良寛さんにつけたあだ名。与板は良寛の生地出雲崎の近郊で、彼の父の出身地でもあった。右はおよし宛書簡に見える歌。酒の無心の歌である。寒くなったね、およしさ。私は螢の身ゆえもう光ることもできないよ。水の好きな螢に、どなたか黄金の水〈酒)をめぐんでくれる方はいないものかね。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 ビールとか日本酒で、「金(かね)くさい」というのはけなし言葉ですが、黄金水といえば日本酒の雅語ですかそうですか。淡麗辛口の対極に芳醇甘口があるとは思いますが、あの濃厚な日本酒をガラスに注いだ時、黄金とは感じないよねえ。

 「ほう、黄色いんですね」「ダメダメこれは黄色じゃない」「金色」


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 十四日、オ昼スギヨリ、歌ヲヨミニ、ワタクシ内ヘ、オイデクダサレ

                        正岡子規

 『子規全集』中「『竹乃里歌』拾遺」所収。門人岡麓(おかふもと)宛明治三十二年三月十三日付ハガキ。子規には同種の消息歌が多い。前出の良寛の歌といいこの歌といい、歌が古来、人と心を通わすための実用の具だったという大事なことを思い出させるものだ。歌にこもる親しい気息とユーモアは、気取りや気張りのために孤独におちいる弊のある現代の歌に掛けているものをも教えてくれる。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 「秋の歌」なのに「三月十三日」。これだからもう……。良寛さんの書簡をみて唐突に思い出しちゃったのでしょうねえ。


 それと、門人の筆名「岡麓」っておもしろいですね。いったいどっちにいるんだ。

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)