2011-08-20
石に腰を、墓であつたか (山頭火)
■ [筆記][国文][評論][折々のうた][秋歌]秋のうた を読む(その13) 
25
遠き樹のの上なる雲とわが胸とたまたま逢ひぬ静かなる日や
尾上柴舟(おのえさいしゅう)
『静夜』(明四〇)所収。落合直文のあさ香社の門下から出た。明治後期、自然主義に呼応して叙景詩運動を短歌界で推進した。優美な仮名文字の書家としても名高い。歌は今日から見ると淡泊すぎる感もあるが、右の歌ではその淡泊さがかえってゆったりした味わいを生んでいる。遠く樹上にかかっている白雲が、自分の心の思いにふと寄りそう感じがしたのだ。静けさがそれで一層深くなった。
大岡信『折々のうた』岩波新書
わが胸と、と言ってしまうのですから単純な叙景歌ではないですね。
26
石に腰を、墓であつたか
種田山頭火(たねださんとうか)
『草木塔』(昭一五)所収。漂泊の俳人山頭火は数年前一種のブームを呼んだ。定本版の句集や全集が編まれたことも一因だったが、日本人の心にある放浪の行者的な詩人へのあこがれ、共感が、山頭火という近代の放浪者に新たな対象を見出したのであろう。出家して禅寺の堂守となったが、漂泊の思いにかられてはそこを離れ、食を乞い、野宿して山野を流浪した。山中、疲れてふと腰かけた石が、墓石だったのだ。
大岡信『折々のうた』岩波新書
いうことなし。

- 作者: 大岡信
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/05/20
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