蜀犬 日に吠ゆ

2011-08-23

[][][][][]秋のうた を読む(その16) 19:56 はてなブックマーク - 秋のうた を読む(その16) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 あまの原ふりさけっみれば春日(かすが)なる三笠(みかさ)の山にいでし月かも

                          阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)


 『古今集』巻九羇旅(きりょ)。遣唐学生として十六歳で渡唐、玄宗皇帝に仕えて出世した。大詩人の李白や王維とも交遊。三十数年後、新たな遣唐使一行の帰国の折、共に帰朝することになり、海辺まで来た時この望郷の歌を詠んだとされている。東の空に月が輝く。あれは奈良の三笠山の上にのぼった月だ。その同じ月を、今私は去らんとする唐土で見あげている。ああ、大和よ。だが彼の船は難船。安何に漂着し、彼は再び唐に戻り、ついに日本には帰れなかった。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 「今私は去らんとする唐土で見あげている。ああ、大和よ。だが彼の船は難船。」の流れに笑った。不謹慎。

 鑑真和上も南国に漂着したそうですけれども、東シナ海とか沖縄のほうって黒潮が卓越しているから南から北に押し流されそうなイメージがあるんです。ポリネシアだかインドネシアあたりから米をもってきた丸木船の人たちは海流に乗ったんでしょう? 嵐の晩、海は逆流するのでしょうか。難破してみないと分からないのでしょうか。



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 君が行く道のながてを繰(く)り畳(たた)ね焼きほろぼさむ天(あめ)の火もがも

                      狭野弟上娘子(さののおとがみのおとめ)


 『万葉集』巻十五。「弟上」は「茅上(ちがみ)」とも。男子禁制の斎宮寮に仕える女官だったが、中臣宅守(やかもり)とひそかに通じ、露見した。男は越前に流罪。二人が交した歌六十三首は、『万葉集』中の異色編である。特に娘子の歌が劇的性格の点ですぐれる。右は中でも有名な一首。「道のながて」は配所までの長い道。その長い道をくるくるとたぐり寄せ、丸めて焼きつくしておくれ、天の火よ。女の悲嘆がきわまった所に火の幻が立った。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 「焼きつくせ!」

 「『万葉集』に出てくる「天の火」だよ、ラーマヤーナではインドラの矢とも伝えているがね」

 あかん。感想が「ジブリっぽい」しか出てこない。


折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)