2011-08-25
わが旅のさびしさはゆがんださかづき(山頭火)
■ [筆記][国文][評論][折々のうた][秋歌]秋のうた を読む(その18) 
35
林間(りんかん)に酒を暖(あたた)めて紅葉(こうえふ)を焼(た)く 石上(せきしょう)に詩を題して緑苔(りょくたい)を掃(はら)ふ
白居易
『和漢朗詠集』巻上「秋興」。白楽天は塔の詩人だが、朗詠集に名句をさぐると、自然に白詩を拾う形になってしまう。日本人の生活感覚に溶けこんだ句が多いのである。林間で紅葉を集めて燃やし、酒を暖める。石上の緑のこけを掃いおとして、詩を書きつける。山寺に秋を楽しむこの詩句は、謡曲「紅葉狩」その他に引かれて広く知られるが、たしかに秋の興趣の端的な表現はここにはある。「林間に紅葉を焼いて」とあるべき叙述を逆にして意を強めた。
大岡信『折々のうた』岩波新書
『和漢朗詠集』は音韻が変な読み下しがあるのでちょっと入り込めない所があります。これも名詩ですけど、「りんかんにさけをあたためて」まではいいのですが「こうえふをたく」だとうるさい感じ。
ま、熱燗が飲めりゃなんでもいいか!!
36
川に沿(そ)いのぼれるわれと落(お)ち鮎(あゆ)の会(あ)いのいのちを貪れるかな
石本隆一(いしもとりゅういち)
『星気流』(昭四五)所収。昭和五年生れの現代歌人。感覚を精細に表現し、心理の陰影に富んだ歌を作る。山間の清流をさかのぼって旅したのだろう。旅舎の夕食に産卵のためくだってきた落ち鮎が出た。それをむさぼりつつ、自分とこの一尾との出会いを思い、いきものの悲しみの感をいだいたのだ。「のぼれる」われと「落ち」鮎の、「会いのいのち」をむさぼったというところ、目が詰んだ表現である。
大岡信『折々のうた』岩波新書
「目が詰んだ」? 碁の話? 評論の言葉がもうわけわからん。
歌自体は凄くいいですよ。「会いのいのちを貪れる」は、ジビエじゃないけど、毎食毎食がそういうことでしょう。旅先で、川を見ながら歩いたのでそれが一層身につまされるということでしょうね。

- 作者: 大岡信
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